研究課題/領域番号 |
15H04485
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村中 俊哉 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60342862)
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研究分担者 |
福島 エリオデット 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40724448)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオテクノロジー / 植物 / 代謝工学 / ゲノム編集 / P450 / シロイヌナズナ / 酵母 / トリテルペノイド |
研究実績の概要 |
多くの生理活性物質が存在することが知られている植物トリテルペノイドの生合成には、シトクロームP450モノオキシゲナーゼ(以下CYP)の複数のサブファミリーが関わる。本研究では、酵母発現系を用いたヘテロガスな系により、その酵素機能を解析するとともに、これら代謝酵素遺伝子の植物内における本来の機能評価を行うために、近年急速に発展してきたゲノム編集技術を用いる。これにより、目的とする酵素遺伝子の欠失、置換などを植物体内で行い、植物における当該酵素ならびに当該酵素が係わるトリテルペノイドの機能を明らかにし、植物代謝生化学研究の新たな基盤形成に資することを目的とする。 研究代表者らはすでにCYP716Aサブファミリーが、β-アミリンなどの28位の酸化活性を有することを、酵母を用いた機能解析により見いだしている(Fukushima et al. PCP 2011)。本遺伝子サブファミリーは、双子葉植物に広く見られることから 、双子葉植物に共通な生理機能を有する可能性が推察された。シロイヌナズナには、2種のCYP716Aファミ リー(CYP716A1, A2)がある。H27年度、酵母を用いた機能解析により、両分子種に28位水酸化活性があることに加え、CYP716A2では、22α水酸化酵素活性もあることを見出した(Yasumoto et al. FEBS Let 2016)。さらに、これらの遺伝子のTALENによる欠失変異植物体を取得した。一方、カンゾウ由来の30位の酸化酵素であるCYP72A154、ならびに24位水酸化酵素であるCYP93E3についてCRISPR/Cas9によるゲノム編集のためのベクターを構築した。今後これらのCYPについてゲノム編集植物における機能評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでCYP716AサブファミリーのCYPの多くは、トリテルペノイドの28位水酸化ならびに酸化に関わると報告されていたが、今回、シロイヌナズナ由来のCYP716A2が、トリテルペノイドの28位水酸化ならびに酸化のみならず22α位の酸化に関わることを見出した。CYP716A2 により生成される22α-ヒドロキシ-α-アミリンは、炎症シグナルの鍵酵素である5-リポキゲナーゼ阻害活性を有することが示され、抗炎症薬への応用が期待される。22α-ヒドロキシ-α-アミリンはパタゴニアに生息するキク科植物からの報告されている。今後名古屋議定書により外来植物へのアクセスが難しくなると考えられるが、抗炎症薬への応用が期待される22α-ヒドロキシ-α-アミリンを生産させることが可能となり、予想外の成果となった。植物での機能を評価するためのゲノム編集に向けた研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナCYP716A1, A2については両遺伝子が欠失した植物をTALENを用いたゲノム編集により得ることができた。また、カンゾウCYP72A154ならびにCYP93E3についてはCRISPR/Cas9によるゲノム編集ベクターを構築できた。カンゾウでは培養ストロンを用いた毛状根培養系による形質転換/ゲノム編集を計画しているが、形質転換効率があまり高くないことがわかってきた。引き続き本計画通り実施する予定であるが、カンゾウに加え、形質転換毛状根がルーチンに作成できることが判明したタンポポについても検討することとする。
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