研究課題/領域番号 |
15H04488
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊東 信 九州大学, 農学研究院, 教授 (40253512)
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研究分担者 |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
谷 元洋 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20452740)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エルゴステリルグルコシド / 糖脂質 / 出芽酵母 / ABCトランスポーター |
研究実績の概要 |
エルゴステリルグルコシド分解酵素EGCrP2を欠損したC. neoformansはEGが液胞に蓄積することを明らかにしていたが、本年度はEGが培地中に放出されることを見出した。この分子機構を解明するために、出芽酵母の系を用いた。まず、EG分解酵素欠損株を作製し、さらにこの株にEG合成酵素を過剰発現することでEGが大量に蓄積する株を作製した。このダブル変異株は、細胞内だけでなく培養液にも多量のEGが検出されたことから、出芽酵母には過剰なEGを排出する機構が備わっていると考え、その排出機構を検討した。まず、EGの排出がトランスポーターと分泌小胞のどちらに依存しているのかを明らかにするために、培養6時間後の上清を超遠心分離し、上清(トランスポーター由来EG)と沈殿(分泌小胞由来EG)に分け、それぞれのEG量をLC-MSで定量した。その結果、上清には沈殿の約20倍量のEGが存在していた。従って大部分のEGはトランスポーターを介して培地中に放出されていると推測される。出芽酵母には約30種類のATP - Binding Cassetteトランスポーター(ABCトランスポーター)が存在する。UGT51 OE/egh1 KOを親株としてABCトランスポーターを欠損した三重変異株を作製したところ、yor1欠損株は培養のどの時期においても培地中のEG量が激減していた。Yor1はオリゴマイシンなどの薬剤排出トランスポーターとして知られているが、本研究によって過剰に合成されたEGの排出にも関与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真菌類のエルゴステリルグルコシド(EG) 合成酵素、分解酵素遺伝子を同定することにより、EGを過剰蓄積する出芽酵母変異株の作製した。この変異株を用いた分子遺伝学的な方法によりEG排出トランスポーターを初めて同定することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
真菌類のエルゴステリルグルコシド(EG) 合成酵素、分解酵素遺伝子を同定し、それらの遺伝子を欠損したCrypotococcus neoformansを作製することができた。次年度は、それらの変異株を用いた動物実験を実施することで、C. neoformansにおけるEG合成の生理的な意義を探る。
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