研究実績の概要 |
真核微生物のステリルグルコシドの生理機能を解明するために、Crypotococcus neoformansのステリルグルコシド合成酵素(CnSGS1, CnSGS2)の同定を試みた。C. neoformansには出芽酵母のEG合成酵素(Ugt51)のホモログが2つ(CnSGS1, 2)存在し、大腸菌で発現させた両リコンビナント酵素はUDP-グルコースからグルコースを種々のステロールに転移する活性を示した。CnSGS2欠損株ではEG合成活性が大幅に低下し、CnSGS1/2二重欠損株の活性は検出されなかった。また、CnSGS1欠損株のEG量は野生株と同程度であったが、CnSGS2欠損株では顕著に減少しCnSGS1/2二重欠損株では検出されなかった。野生株では熱ストレス(25℃→37℃)負荷によってCnSGS1、CnSGS2のmRNAの上昇とEG量の増加が観察されたが、CnSGS1/2二重欠損株ではEG量の増加は見られず、熱ストレス負荷時の生存率も低下した。CnSGS1/2二重欠損株を感染させたマウスは、野生株を感染させたマウスと比較して生存率が有意に上昇した。以上の結果から、C. neoformansにおけるEG合成は熱ストレス耐性と病原性において重要な役割を果たしていることが明らかになった。 海洋性真核微生物であるラビリンチュラ類にステリルグルコシドのグルコースに脂肪酸が結合するアシルステリルグルコシド(ASG)が比較的多量に存在することを見出した。ASGの分子種をLC-MSを用いて解析したところ、ドコサヘキサエン酸(DHA, C226n-3)を構成脂肪酸として持つ新規構造であることがわかった。ASGは植物において見出されているが、DHAを持つものは今回ラビリンチュラ類から見出されたものが初めてである。
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