研究課題
昨年度までの実験で、いくつかの系に置いてマイコパラサイト現象が再現性を持って観察されることを明らかにした。その中で、キリタンポタケは複数の菌にマイコパラサイトされるが、興味深いことにパラサイト存在下で、グリセオフルビンを生産することが明らかになった。このものの同定は、常時本物質を生産する菌から単離、通常の構造決定の後、HPLC-MSなどの挙動が完全に一致することにより確認した。グリセオフルビンは、真菌の微小管に結合して脱重合を阻害することにより、抗真菌活性を示すことが知られているが、被パラサイト側が、このような物質を生産するか不明であり、次年度以降その詳細を検討する。これを目的に、常時グリセオフルビンを生産する類縁菌を大量培養し、必要量生成することに成功した。また、マイコパラサイト現象を示すベニタケのキノコCalcarisporium arbusculaの液体培養液から複数のロリジン類を短離した。文献を調査したところ、立体構造が不明なロリジン類も複数含まれていたため、NOE実験、分子モデリング、時間依存型密度汎関数分子起動計算によるECDスペクトルの予想などを行い、不明であったすべての立体化学を明らかにした。単離したロリジン類の中には、猛毒キノコとして知られるカエンタケにも含まれており、その生物学的意味も興味深い。現在Calcarisporium arbusculaを大量培養しており、培養液に含まれるマイナー成分についての解析も重要になると考える。
2: おおむね順調に進展している
複数のマイコパラサイト現象について化学物質の関与を示唆する実験結果を得た。また、抗菌物質として知られるグリセオフルビンが被パラサイトのパラサイト存在時に生産するという興味深い結果も得ている。毒物質と知られるロリジン類がマイコパラサイト現象に関与している可能性が高いことを見出した。この研究の過程で、エピコクリオキノン、ホモジェステロン、シクロヘルミントール、ネオマクロフォリンなど多数の新規物質を見出した。
本年度に見出したマイコパラサイト現象支配物質候補について、マイコパラサイトの進行と検出量、ホスト、およびパラサイトに与える毒性などを詳細に検討し。マイコパラサイト現象の分子機構に迫りたい。
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