研究課題/領域番号 |
15H04491
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
橋本 勝 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (40212138)
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研究分担者 |
殿内 暁夫 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50302021)
田中 和明 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (60431433)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイコパラサイト支配物質 / cyclohelminthol X / cyclohelminthol Y / neomacrophorin X |
研究実績の概要 |
マイコパラサイト現象を示すHelminthosporium velutinum yone96の二次代謝物の検索を行い、これまでに単離したcyclohelminthol I-IVに加えて、スピロシクロプロパンを介したハイブリッド構造を有するcyclohelminthol X及びY1, Y2, Y3, 及びY4の単離・構造決定に成功した。これら化合物の構造決定では、NMR解析に有用なプロトンが、中心骨格部分に無いため、得られる構造情報は不十分であった。そこで可能な全ての構造について、密度汎関数法を用いた理論化学シフト値、及び円二色性スペクトルの比較によりその絶対配置を含めて全構造を明らかにした。これら化合物はcyclohelminthol IVの水酸基が酸化されることによって、あたかもカルベン種のようなシクロプロパン化が進行することで生合成されていると考察した。cyclohelminthol X, Y1-Y4は強い抗菌活性を示すことから、マイコパラサイト現象への関与が示唆された。 またTrichoderma sp. 1212-03から単離したneomacrophorin Xも既知のneomacrophorin構造と、アントラキノンとのハイブリッドである。 詳細を明らかに出来ていないが、両菌とも共通して言えることだが、これらハイブリッド二次代謝物は培養後期に単離され、培養条件によってはほとんど得られない場合もあり、菌の培養環境の変化がこれら二次代謝物の生合成を誘起している可能性がある。 以上の結果は、マイコパラサイト現象にはハイブリッド二次代謝物が関与している可能性が示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二種のマイコパラサイトからこれまで例を見ない特徴的な構造を有する二次代謝産物を複数見出した。その構造的特異性からマイコパラサイト現象との関連性が示唆され、メカニズム研究にむけて大きな知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、マイコパラサイト二次代謝物にはハイブリッド二次代謝物が多く含まれていることを明らかにしたが、菌類の中には、他の微生物の繁殖も含め環境変化に対してハイブリッド二次代謝物により対応していると予想した。 即ち、環境変化により順調な生育が阻害されると特定な酸化酵素などを発現し、例えば自身の有する二次代謝物質を酸化活性化して別の二次代謝物とハイブリッドさせることで二次代謝物スペクトルを拡大してそれに対応しているのではないかというものである。 これを確認すべく、既知化合物を含めてTrichoderma sp. 1212-03生産物を同定し、生育ステージと二次代謝物の関係を明らかにすべく検討する。環境変化の方法として、他の菌(生菌)の添加、菌抽出物の添加、培養温度及び培養pHの変化などとの関係を明らかにする。
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