研究課題
昨年度のGM3ホモダイマー形成の機構解明の研究において、脂質部分であるセラミドを構成する脂肪酸の炭素鎖長がホモダイマーの寿命に大きく影響することが明らかとなった。本年度は、GM3の糖鎖部分のダイマー形成における影響を精査するため、GM3の糖鎖を構成するシアル酸の部分修飾体(C1位還元体、C5位デアミノ体)およびガラクトースの部分修飾体(C6位デオキシ体)を有するGM3蛍光プローブを合成し、1分子観察により生細胞膜でのホモダイマー形成時間を測定した。その結果、シアル酸5位デアミノ体のダイマー寿命が著しく低下することが明らかとなった。一方で、シアル酸C1位還元体では、形成寿命の若干の増加が見られた。また、ガラクトースC6位デオキシ体では、形成寿命の変化は微小であった。このことから、糖鎖間での官能基レベルでの相互作用がダイマー形成の重要な形成因であり、中でもシアル酸5位アセトアミド基による水素結合が重要であるとの知見が新たに見出された。擬似糖鎖ドメインの創製研究では、昨年度合成した光反応性LacCerを用いた細胞膜モデルでの光架橋実験を実施した。LacCer単分子膜(BL膜)を用いた架橋実験で、脂質間で二量体が優位に形成されることを確認した後、リポソーム中での光架橋を試みたところ、同じくホモダイマーが優位に形成されることを確認した。リポソーム中でのダイマー形成はコレステロールの含有率に依存したことから、Lo-Ldの相分離下で、Lo相中に局在するLacCerがホモダイマー形成を頻繁に繰り返していることが示唆された。本実験により、モデル膜中でLacCerの架橋部位を脂質部位に限定する制御条件を見出すことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖ドメインの形成機構の解明研究では、GM3の類縁体プローブを用いた実験が計画通り進行し、一定の成果を収めることが出来た。擬似糖鎖ドメインの創製研究では、対象分子をLacCerに単純化したことにより、昨年度までの遅れを挽回することができ、最終年度には予定した成果が見込める。
今後は、擬似糖鎖ドメインの創製研究に一層注力する。本年度の実験で光反応性官能基としてジアジリンを用いた場合、ホモダイマー以上のオリゴマー形成が確認できなかったことを踏まえて、分子間架橋をより効率的に行うことが出来る官能基の選別を上半期で実施し、その結果を元に下半期でドメイン創製ならびその挙動解明を推進する。
http://www1.gifu-u.ac.jp/~kassei1/
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