研究課題
前年度までのGM3ホモダイマー形成の機構解明の研究において、脂質部分および糖鎖部分の構造が形成寿命の長短に影響し、脂質-脂質間の相互作用、糖鎖-糖鎖間の相互作用の相加的な結果として、形成寿命が規定されている可能性を見出した。最終年度となる本年度では、糖鎖相互作用の寄与を詳解するため、単糖を糖部分として有するグルコシルセラミド(Glc-Cer)と糖部分を欠くセラミド(Cer)の蛍光プローブの合成と一分子イメージングによる細胞膜動態解析を行った。これまでの蛍光ガングリオシドプローブの設計指針に基づいて蛍光色素と分子本体を適切な鎖長を有するスペーサーによって隔てた蛍光Glc-Cerおよび蛍光Cerを合成し、DRM分配ならびLo-Ld分配により、各蛍光体がラフト親和性を維持していることを確認した。一分子イメージングによる解析よって、Glc-Cer、Cerのホモダイマー形成時間は、それぞれ58ms、48msであることが分かった。これは、二糖を有するLac-Cerの98msに比べ短く、ホモダイマー形成における糖鎖-糖鎖相互作用の寄与は、二糖から増大することが明らかとなった。また、これまで調査したスフィンゴ糖脂質(ガングリオ系)とは異なるサブ系列であるグロボ系に属するSSEA-3の蛍光プローブを合成し、同じくホモダイマー形成を観測したところ、115msの形成寿命であることが分かった。これにより、ホモダイマー形成はLac-Cer以降のスフィンゴ糖脂質に普遍的に備わっている性質であることが示唆された。さらに、ガングリオシドのホモダイマーの動態解析では、EGF受容体との相互作用の特異性を調査した。その結果、EGF受容体モノマーはGM3特異的に相互作用し、GM3ホモダイマーがモノマーよりも親和性が高いことが明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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