研究課題/領域番号 |
15H04496
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中川 優 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90452284)
|
研究分担者 |
竹腰 清乃理 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10206964)
相田 美砂子 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90175159)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 抗生物質 / 糖鎖 / pradimicin / 分子認識 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性菌の出現と蔓延は近年特に深刻化しており,新規作用機序を有する抗菌薬開発の必要性と重要性が急速に高まっている.本研究では,糖鎖に結合するユニークな天然低分子化合物・Pradimicin A (PRM-A) の糖鎖認識機構の解明とそれに基づく新規抗菌薬リードの創製を行い,「核酸やタンパク質」ではなく,「糖鎖」を標的分子とした新たな抗菌薬開発戦略を提示することを目指している. PRM-A に基づいて抗菌薬を合理的に設計するためには,標的分子であるマンナンとの結合様式に関する知見が必要不可欠である.そこで本年度は,マンナンの構造上の特徴を有する 2 ~ 3 残基のマンノオリゴ糖を系統的に合成し,PRM-A が高い結合親和性を示すマンナン部分構造を特定することを試みた.抗真菌試験,共沈殿試験および等温滴定カロリメトリー試験によって結合親和性を評価したところ,いずれの試験においても PRM-A は分岐構造を有するマンノトリオース (TriMan) に最も強く結合することを示唆する結果が得られ,PRM-A はマンナンの TriMan 部分に選択的に結合することが明らかとなった. さらに,PRM-A のマンノース (Man) 認識メカニズムの解析も並行して進め,以下の二つの知見を得た.1) ピラノース環内酸素原子を水素結合能が低い硫黄原子に置換した 5-S-Man を用いて結合試験を行なった結果,Man のピラノース環内酸素原子は PRM-A との結合に重要ではないことが示唆された.2) PRM-A は Ca2+ 複合体となって Man と結合する.そこで,Ca2+ のサロゲートとして 113Cd2+ を用いた固体 113Cd-NMR 解析により Ca2+ 結合部位を調べたところ,PRM-A はアントラキノン部分で Ca2+ と結合していることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である「PRM-A が高い結合親和性を示すマンナン部分構造の特定」が達成できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
PRM-A がマンナンの TriMan 部分に高い結合親和性を示すことが確認されたため,今後は固体 NMR 解析および密度汎関数 (DFT) 計算により TriMan と PRM-A との結合様式を明らかにすることで,PRM-A が TriMan に対して高い結合親和性を示す要因を究明する.さらに本知見をもとに,合成が容易で,かつ凝集性を示さない PRM-A アナログを新たな抗菌薬リードとして設計開発することを試みる.
|