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2016 年度 実績報告書

食品因子による制御性T細胞及びB細胞誘導の分子基盤と免疫・炎症反応制御効果の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15H04498
研究機関東京大学

研究代表者

戸塚 護  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70227601)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード制御性T細胞 / 制御性B細胞 / フィトケミカル / 免疫抑制作用 / Foxp3 / インターロイキン10 / 大腸炎モデル
研究実績の概要

制御性T細胞誘導活性をもつエリオジクチオールの存在下で活性化刺激を加えて培養したマウスCD4+T細胞について、タンパク質発現の網羅的解析を行った。2次元電気泳動像において対照群と発現量の異なるスポットから抽出したタンパク質の酵素分解断片について、質量分析計を用いた解析を行い同定を試みたところ、4つのスポットについて候補タンパク質が得られた。
制御性B細胞誘導活性をもつケンフェロール、タマリキセチン、イソラムネチン、ミリセチンが、マウス脾臓由来樹状細胞、あるいはマウスマクロファージ細胞株J774.1細胞のインターロイキン10(IL-10)産生に与える影響を検討した。その結果、4種のうちタマリキセチンは樹状細胞およびマクロファージのIL-10産生に対しても増強効果を示すことが明らかとなり、B細胞、樹状細胞、マクロファージに共通する機構を介してIL-10産生を増強することが示唆された。
C57BL/6マウスに2週間ケンフェロールを胃内強制投与したのち、脾臓および腸間膜リンパ節から細胞を調製し、IL-10産生細胞の割合をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、ケンフェロールの経口投与は腸間膜リンパ節のB細胞およびT細胞におけるIL-10高産生細胞の割合を増加させることが明らかとなった。
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルを用い、上記の食品因子を単独あるいは組み合わせて投与した際の効果を検討した。ケンフェロール、タマリキセチン、あるいはその両者を同時に2週間C57BL/6マウスに胃内強制投与し、投与期間の最後の8日間にDSSを含む飲料水を自由摂取させ、その間の体重変化、糞便の状態を観察したところ、両者を同時に投与した場合に顕著な症状抑制効果が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

制御性T細胞誘導活性をもつ植物化学因子の作用機構に関して、関与が示唆されるタンパク質の候補が得られており、また免疫関連細胞の免疫応答抑制活性を誘導するような因子も複数得られ、その生体内での効果も明らかにしており、計画は概ね順調に進んでいるものと判断している。

今後の研究の推進方策

エリオジクチオール存在下で活性化刺激を加えることにより制御性T細胞を誘導した場合に誘導されるタンパク質として4つの候補を得たが、その役割については未解明である。これらのタンパク質の関与について、遺伝子発現、シグナル伝達経路等の解析から検討する。また、芳香族炭化水素受容体(AhR)依存的に制御性T細胞分化を誘導するナリンゲニンと、AhR非依存的に誘導するエリオジクチオールのT細胞分化誘導の比較解析から、その作用機構を検討する。
これまでの研究で制御性T細胞や制御性B細胞を誘導する活性やIL-10産生を誘導する活性が見出された、免疫抑制的に作用するがそれぞれ作用点の異なる複数の食品因子を組み合わせた場合の効果も検討する。in vitroではより生体に近い応答がみられる脾臓細胞を用いた実験系で、制御性T細胞および制御性B細胞の誘導、IL-10産生、IL-6等の炎症性サイトカイン産生を解析する。また、増強効果が認められた食品因子を組み合わせて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルにおける炎症抑制効果を検討する。
高脂肪食を投与したマウスに当該食品因子を経口投与した際に、脂肪組織の炎症関連指標の変化を解析する。すなわち、脂肪組織に存在するCD8+T細胞のCD44及びIFN-γの発現、脂肪組織におけるTNF-αおよびCCL2などの炎症性サイトカインの発現量の変化を解析する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Catechol Groups Enable Reactive Oxygen Species Scavenging-Mediated Suppression of PKD-NFkappaB-IL-8 Signaling Pathway by Chlorogenic and Caffeic Acids in Human Intestinal Cells2017

    • 著者名/発表者名
      Hee Soon Shin, Hideo Satsu, Min-Jung Bae, Mamoru Totsuka and Makoto Shimizu
    • 雑誌名

      Nutrients

      巻: 9(2) ページ: 165

    • DOI

      doi:10.3390/nu9020165

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Enhancement of oral tolerance induction in DO11.10 mice by Lactobacillus gasseri OLL2809 via increase of effector regulatory T cells2016

    • 著者名/発表者名
      Ayako Aoki-Yoshida, Kiyoshi Yamada, Satoshi Hachimura, Toshihiro Sashihara, Shuji Ikegami, Makoto Shimizu, Mamoru Totsuka
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 11(7) ページ: e0158643

    • DOI

      doi:10.1371/journal.pone.0158643

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] A pilot randomized control trial investigating the effect of anserine/carnosine supplementation on verbal memory and brain perfusion of elderly people2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuhiro Hisatsune, Jun Kaneko, Hiroki Kurashige,Yuan Cao, Hideo Satsu, Mamoru Totsuka, Yoshinori Katakura, Etsuko Imabayashi, and Hiroshi Matsuda
    • 雑誌名

      Jounal of Alzheimer Disease

      巻: 50 ページ: 149-159

    • DOI

      DOI 10.3233/JAD-150767

    • 査読あり
  • [学会発表] 鶏肉イミダゾールジペプチドの高齢者の脳老化改善に対する効果2017

    • 著者名/発表者名
      谷川 輝虎、丁 瓊、金子 順、戸塚 護、片倉 喜範、今林 悦子、松田 博史、久恒 辰博
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20
  • [学会発表] Carnosine enhances intestinal IgA antibody production in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Cao Yuan, Junya Uchida, Yuichi Tsuda, Hideo Satsu, Makoto Shimizu, Mamoru Totsuka
    • 学会等名
      the 2016 World Life Science Conference (WLSC2016)
    • 発表場所
      China National Convention Center(北京、中華人民共和国)
    • 年月日
      2016-11-01 – 2016-11-03
    • 国際学会
  • [学会発表] 腸管における炎症反応と免疫応答制御2016

    • 著者名/発表者名
      戸塚 護
    • 学会等名
      第98回日本栄養・食糧学会関東支部退会シンポジウム
    • 発表場所
      東京農業大学世田谷キャンパス
    • 年月日
      2016-10-22 – 2016-10-22
    • 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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