研究実績の概要 |
(1)コンジェニック系統群を用いた原因遺伝子の染色体上の存在領域の絞込み→ 対照系統であるC3Hマウスに2型糖尿病系統のNSYマウスの第11番染色体の71 Mb断片(0-71.7Mb)を導入したコンジェニック系統(R2と命名)を親系統として、C3Hマウスとの交配により、ここの71Mbをさらに断片化したものを保有するコンジェニック系統の7種類の作出を進めた。その結果、5種類のコンジェニック系統(R2C, R2E, R2F, R2H, R2Jと命名)を確立あるいは確立できる見通しが立った。これらのうち、最初に確立できたR2Fコンジェニック系統に高脂肪食を10週間摂取させて、糖尿病形質の解析(耐糖能試験、インスリン分泌能試験、インスリン抵抗性試験)を開始した。今後、5種類全てのコンジェニック系統の糖尿病形質判定を最短期間で完了し、その結果から、インスリン分泌不全あるいはインスリン抵抗性を引き起こす糖尿病遺伝子の存在領域を限局する。 (2)網羅的遺伝子発現量比較解析による候補遺伝子の選抜→ マウス個体で膵臓にコラーゲナーゼを還流して消化した後、ランゲルハンス氏島をフィコールを用いた密度法により単離し、そこからRNAを抽出する方法を確立した。この方法を用いて、糖尿病コンジェニック系統とC3H系統(対照系統)のランゲルハンス氏島からRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行う。 (3)ゲノム変異情報に基づいたエキソンに変異を有する候補遺伝子の選抜→ 次世代シークエンサー解析により得られたNSYとC3H 系統間のゲノム変異情報を用いて、第11番染色体のR2領域(0-71.7 Mb)内でエキソンにアミノ酸置換をもたらす変異を有する遺伝子の内、ランゲルハンス氏島機能や糖代謝への機能への関与が示されている遺伝子であるSmek2, Shpxd2b, Slit3, Pttg1, Il12b, Il9rを候補遺伝子として注目した。
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