研究課題/領域番号 |
15H04501
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神戸 大朋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90303875)
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研究分担者 |
宮前 友策 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (30610240)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 亜鉛欠乏 / トランスポーター / Zip4 / 大豆抽出物 / ソヤサポニンBb / 高齢者 |
研究実績の概要 |
・マウスHepa細胞を用いて確立したスクリーニング系を用いて、300種類ほどの食品抽出物や化合物をスクリーニングし、複数の香辛料にマウスZIP4発現を増加させる活性を見出した。これまでに活性因子として同定していたソヤサポニンBbとは異なり、エタノール抽出物に強い活性が認められるため、新しい活性因子であることが期待される。現在、活性因子の精製を進めている。
・新たにヒトZIP4 を内在的に発現する細胞(AsPC1細胞)を見出し、これまでに活性因子として同定していたソヤサポニンBbがヒトZIP4に対しても発現促進活性を示すことを明らかにした(Biochem. J., 472, 183-93, 2015)。この解析を円滑に実施するために、ヒトZIP4を認識するモノクローナル抗体を作出し、ヒトZIP4を直接評価できるスクリーニング系を構築した。本系は、ヒトZIP4に対する有用性を評価できるため、同定因子の実効性を明示する上で意義ある成果となる。
・食品因子の有用性評価系を確立するために、ラットZIP4を認識するモノクローナル抗体を作出し、ラットの消化管におけるZIP4の亜鉛応答性発現の解析系を構築した。本解析において、ラットZIP4の発現が、これまでに予想されていたよりも鋭敏(亜鉛欠乏食1日目に弱く、2日目までには強く)に応答することを示し、ラットを用いて同定食品因子を検証できることを示す結果を得た(Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol., 310, R459-R468, 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ZIP4発現促進活性を有する食品因子のスクリーニングにおいて進展があり、複数の香辛料にソヤサポニンBbとは異なる活性があることを認めた。また、食品因子の有用性評価系を確立するために、ラットZIP4を認識するモノクローナル抗体を作出して確立したラットの消化管におけるZIP4の亜鉛応答性発現を解析する系を用いて、ラットが予想よりも鋭敏に同定食品因子を検証できることを示す結果を得た。さらにヒトZIP4を内在的に発現する培養細胞を見出し、ヒトZIP4を認識するモノクローナル抗体を作出することで、ヒトZIP4を直接評価できるスクリーニング系を構築した。これら成果は、当初の予定を上回る成果であり、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1). 動物実験における同定因子の効果の検証 ソヤサポニンBb、あるいは昨年度新たに同定した香辛料を一定量添加した餌で一週間飼育したラット、及び、通常食で飼育したラットに、亜鉛安定同位体(68Zn)を経口投与し、30分後に血中の68Znの量をICP-MSにより定量することで、血中へ亜鉛取り込が増加しているかを検討する。同時に小腸を摘出し、上皮細胞内の68Znの量が増加していること、及び、ZIP4の発現量が大豆サポニンや同定食品因子の添加によって増大していることを確認する。さらに、様々な亜鉛トランスポーターの発現量の定量解析、、血清亜鉛値やアルカリフォスファターゼなどの血清中の亜鉛代謝マーカー分子の活性を測定し、添加した食品因子の亜鉛代謝に及ぼす影響を検証する。 2). 香辛料に含まれるZIP4発現促進活性を有する食品因子の同定 ZIP4の発現促進活性を有することが確認できた香辛料抽出物から、活性本体となる成分を常法に従って精製する。また、従来のHepa細胞のスクリーニング系と、新たに確立したAsPC1細胞を用いたヒトZIP4発現評価系を併用して、食品抽出物をスクリーニングし、ヒトZIP4に対して効果を有する新たな化合物の同定を目指す。活性を有する抽出物を見出し、NMRやMSなど各種機器分析に供することで、活性化合物の構造を決定する。 3). 新規食品因子のZIP4発現促進活性の作用機序に関する解析 ソヤサポニンは、エンドサイトーシスを抑制することで、ZIP4の分解を抑制してその発現を増加させる活性を有する(Biochem. J., 472, 183-93, 2015)。新たに香辛料に見出した因子が、大豆サポニンとは異なる作用機序でZIP4発現促進効果を示すことを確認するため、エンドサイトーシスを阻害剤にて阻害した状態でZIP4の発現を促進させるかどうかについて検討し、亜鉛吸収促進因子を選別する。
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