研究課題
・マウスHepa細胞を用いたスクリーニング系を用いてZip4発現増強因子として同定したソヤサポニンBbの類縁化合物である他のソヤサポニンのZip4 発現増強効果について、マウスHepa細胞、ヒトAsPC1細胞という二種類のZip4発現細胞株を用いて評価した。その結果、いずれのソヤサポニンにおいてもZip4発現増強活性を認めたが、ヒトとマウスZip4に対する効果は、ソヤサポニン類間で異なることが判明した。次に、香辛料などに加え、種々のサポニン類の効果について解析した。結果、香辛料からは、シナモンやキャラウェイ、カーダモン、花椒、桂皮、ターメリックの抽出物に活性を見出した。また、ユッカサポニンやキラヤサポニンにも活性があることを見出した。一方で、試薬として使用されるサポニンには活性は確認できなかった。これら活性をみとめた抽出物から活性因子の同定を試みたが、活性因子の構造などの決定には至らなかった。・消化管上皮細胞バソラテラル膜に局在するZNT1に対する極めて特異的な抗体を作成し、腸管モデル細胞CaCo2細胞を用いて解析した結果、ZNT1が亜鉛欠乏に応じて速やかに分解されることを見出した。すなわち、ZNT1の発現を促進させるような食品成分は、亜鉛吸収を正の方向に増加させると考えられる。そこで、ZNT1の発現を評価できる培養細胞系システムを構築し、スクリーニングを実施した。・亜鉛欠乏食やソヤサポニン含有食を給餌したラットにおいて亜鉛吸収効率改善や、血清亜鉛値、アルカリフォスファターゼなどの血清中の亜鉛代謝マーカー分子の活性を測定したが、ソヤサポニン含有食において、有意な差異をみとめることができなかった。一方で、本解析を実施する過程で新たな亜鉛代謝マーカーの同定に成功したため、本マーカーを指標に考察した結果、ソヤサポニン含有食においては、給餌条件を再検討する必要が考えられた。
3: やや遅れている
Zip4発現増強活性を有する食品因子に関する解析においては、ソヤサポニンにおける新たな知見や、香辛料から活性を含有するものをいくつか選別するなど進展があった。また、ZNT1に対するモノクローナル抗体の作出など、予想を超えた進展もみとめた。しかしながら、ラットやマウスを用いた解析では、新たな亜鉛代謝マーカーの同定には成功したが、食事条件を再検討する必要が考えられるなど、大きな進展を得ることができなかった。
1). 消化管アピカル膜に局在するZip4が上皮細胞内に取り込んだ亜鉛は、バソラテラル膜に局在するZNT1により血流中へ放出されるため、ZNT1の発現を増加させる食品因子は、亜鉛吸収効率を改善する効果が期待される。昨年度に、ZNT1モノクローナル抗体を用いて樹立したスクリーニング系を用いて、活性因子を探索する。2). Zip4とZNT1の活性を増強する因子を組み合わせることで、大きな亜鉛吸収効率改善効果を期待することが可能となる。ソヤサポニン等のZIP4発現増強因子と、上述の解析で見出したZNT1発現増強因子を様々な比率で組み合わせ、消化管上皮モデル細胞を用いて、亜鉛吸収効率改善効果を検証する。なお、消消化管上皮モデル細胞は、通常Zip4を発現しないため、本解析では、研究代表者が樹立した一過的にZip4を過剰発現させることができるCaCo2細胞株を使用する。3). 上記1)と2)で同定したZip4とZNT1発現増強因子を一定量添加した餌を給餌した高齢マウス・ラットにおいて、通常食を給餌した場合に比べ亜鉛吸収効率が改善することを確認する。本解析では、亜鉛安定同位体(68Zn)を経口投与し、30分後に血中の68Znの量をICP-MSにより定量することで、血中へ亜鉛取り込が増加しているかを検討する。同時に小腸を摘出し、上皮細胞内の68Znの量が増加していること、及び、Zip4とZNT1の発現量が増大しているかどうか検討する。さらに、様々な亜鉛トランスポーターの発現量の定量解析や昨年度同定した亜鉛代謝マーカーの活性を測定し、添加した食品因子の亜鉛代謝に及ぼす影響を検証する。
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