研究課題
現在、市場に流通する医薬品のほとんどがGタンパク質共役受容体(GPCR)を介して作用していると言われるように、生体制御分子(ホルモン、食品機能性成分、医薬品など)の多くが受容体を標的として生理作用を発現する。さらに、これらの生体制御分子の多くは、生体内において肝臓等の臓器で代謝され、その代謝産物が神経細胞などで受容体に作用し機能していることが想定される。また、作用標的としての受容体は、GPCR以外には、転写調節因子である核内受容体等も考えられる。本研究では、上述の生体制御分子の機能制御および代謝機構としての硫酸化に着目し、硫酸化された生体制御分子の酵素的調製法開発、受容体を介した情報伝達機構の解析技術開発と神経系細胞におけるその生理機能解明を目的とした研究を行う。具体的には、下記の項目に関する研究を実施している。・ リコンビナント硫酸転移酵素を用いた生体制御分子硫酸体の合成法確立・ 細胞応答を基盤にした受容体評価システムの開発と受容体を介した生理機能解明硫酸化された生体制御分子を評価するためのレポーターアッセイシステム構築のため、培養細胞にレポータープラスミドを導入し、ルシフェラーゼ活性測定により評価できるシステムを検討している。既に、CREの評価系は構築した。今後、さらに他のアッセイ系を順次構築していき、研究期間内に目的を達成する。これらの研究を通じて、受容体を介して作用する生体制御分子硫酸体を同定し、メカニズム等を解明する。
2: おおむね順調に進展している
1)リコンビナント硫酸転移酵素を用いた生体制御分子硫酸体の合成法確立大腸菌にヒト硫酸転移酵素遺伝子を導入して種々の生体制御分子硫酸体を調整する技術を確立し、特にポリフェノール系食品成分硫酸体の調製と、構造解析を行った。ポリフェノール系食品成分は複数の水酸基を有しているが、酵素をうまく活用することで選択的に硫酸基を導入することが可能となった。これらの研究成果は、日本生物工学会の英文誌において発表した。2)細胞応答を基盤にした受容体評価システムの開発と受容体を介した生理機能解明培養細胞にCREレポータープラスミドを導入し、GPCRの下流においてCREが関与するすなわちcAMPがセカンドメッセンジャーとなる系に関して、評価できるシステムを構築した。胆汁酸を特異的に硫酸化する酵素を見出しており、その代謝産物である胆汁酸硫酸体が TGR5を介して作用するか検討している。
・ プロテオミクスによる生体制御分子硫酸体の生理機能解明二次元電気泳動により生体制御分子硫酸体が培養細胞に与える影響を解析し、タンパク質発現に与える影響を検討する。さらに、生体制御分子硫酸体と相互作用するタンパク質をプロテオミクスの手法で網羅的に解析する。・ モデル動物実験による生体制御分子硫酸体特異的メタボローム解析ゼブラフィッシュをモデルに、硫酸転移酵素遺伝子ノックダウンの影響を解析し、生理機能を解明する。遺伝子ノックダウン個体のメタボローム解析やプロテオーム解析を実施する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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