研究課題
高脂肪食マウスの大腸上皮細胞の解析の結果、肥満マウスの大腸では絶食に対する細胞動態の応答に異常を来していることがわかったので、ヒトでこのフェノタイプが反映されているかどうか検証した。ヒト大腸癌手術症例の摘出標本を用い、癌背景粘膜の免疫染色結果を画像解析により定量化し、肥満・糖尿病合併例と非合併例の間に差があるかどうかなど、臨床情報との相関についての解析を行った結果、大腸細胞増殖マーカーや栄養シグナル分子の発現は、BMI、腹囲、皮下脂肪量、血中脂質などと正の相関が見られた。これらの結果はヒトにおいても肥満と並行して、大腸上皮細胞の動態や栄養シグナル活性化状態の異常をきたしていることを示している。マウス高脂肪食投与実験において、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の組成の異なる独自の高脂肪食を作製し与えると、体重増加、脂肪重量及び脂肪肝の形成に大きく差があった。このメカニズムを明らかにするため、免疫担当細胞の解析を行ったところ、飽和脂肪酸食より不飽和脂肪酸食において、脂肪組織や肝臓で自然免疫担当細胞がより強く活性化されていることがわかった。また、不飽和脂肪酸食においては、消化管内及び血液中の酸化ストレス指標も、より高くなっていた。また大腸上皮細胞の遺伝子発現網羅的解析では、低脂肪食に比べて、一部の増殖因子の発現が高く、大腸上皮細胞の細胞回転の促進が示唆された。アゾキシメタンの腹腔内投与による大腸発癌モデルマウスに、大腸で乳酸を遊離する乳酸化ハイアミロース飼料群、コントロール飼料群、さらにこれらに間歇的絶食の有無群を加えた実験を行った結果、乳酸化ハイアミロース自由摂取群で前癌病変数が最も高くなったが、これは間歇的絶食によって抑制することができた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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