研究課題/領域番号 |
15H04504
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
辻 典子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (30343990)
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研究分担者 |
平山 和宏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60208858)
角田 茂 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80345032)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / 乳酸菌 / 樹状細胞 / 小腸常在菌 / インターフェロン-β / トル様レセプター3: TLR3) / Th1 / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
腸内に常在している乳酸菌や食品に含まれるプロバイオティクス乳酸菌は、人々の健康維持・増進に効果があることが知られている。その安全性の高さ、さらには発酵食品への応用の観点から、乳酸菌は食品・医薬品業界から非常に注目されている。その健康増進機能とりわけ腸炎抑制など抗炎症性機構の一端は、乳酸菌二本鎖RNAによる樹状細胞の活性化と、その結果としてのインターフェロン-β(IFN-β)の産生によることを明らかにしてきた。本研究においてはさらに、IFN-βが細胞性免疫(感染抵抗性やがん免疫において重要とされるインターフェロン-γ産生性のTh1細胞)の増強や経口免疫寛容の成立など抗原特異的な免疫応答と免疫恒常性維持に重要であることを明らかにした。また、我々は乳酸菌に特有の樹状細胞活性化経路として、乳酸菌の菌体成分である二本鎖RNAがエンドソームに発現するトル様レセプター3(TLR3)により認識され、IFN-βの産生にいたることを示してきた。本研究では腸管において乳酸菌を認識する細胞群を明らかにすることを目的として培養試験を行い、小腸パイエル板の樹状細胞のうち乳酸菌を認識してIFN-βを産生し、Th1応答を増幅するサブポピュレーションを同定した。免疫応答を増幅する樹状細胞はTLR3の発現が高いCD8陽性樹状細胞であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳酸菌二本鎖RNAを認識してIFN-βを産生する樹状細胞の同定については、上記の通り順調に解析が進んでいる。IFN-βレポーターマウスの作出については、 IRES-CD2(あるいは蛍光タンパク)遺伝子部分を 1本鎖DNAの形にしての作出を計画していたが効率が悪く他の方法に切り替えて進行中である。 IFN-βを介した免疫細胞の機能成熟機構については、ノトバイオートマウスの作成も開始しているが、試験系の安定化のために現在餌や床敷きについて選定し直している。それらの検討と並行して、IFN-βのin vivoにおける役割についてはIFN-β中和抗体を用いた検討を進めている。これまでに乳酸菌の経口投与による腸炎予防効果がIFN-βの中和により消えることを示しているが、今回新たに経口免疫寛容の成立が阻害されることも示した。また、IFNレセプター欠損マウスを用いることにより、乳酸菌刺激により産生されたIFN-βがT細胞機能に及ぼす効果を効率よく示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
乳酸菌の経口投与により産生されたIFN-βが腸管免疫さらには全身免疫の応答性に関与する点に注目しIFN-βの受容体を欠損するマウスを用いて経口免疫寛容成立のメカニズムを探る実験を行う。また、乳酸菌が有する核酸のうち、二本鎖RNAがどのような免疫細胞を標的として活性化するのかを特定するため、TLR3を樹状細胞特異的に欠損する、あるいはマクロファージ特異的に欠損する遺伝子変換マウスを作成して腸炎あるいは経口免疫寛容の実験を行う。IFN-βレポーターマウスやノトバイオートマウスを用いた解析はひきつづき行う。
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