研究実績の概要 |
本研究は、申請者が独自に開発したビタミンC(VC)を体内で合成できないSMP30ノックアウト(KO)マウスとビタミンE(VE)の細胞内輸送能が欠損したα-TTP-KOマウスとを掛け合わせたSMP30/α-TTPダブルノックアウトマウスを用いて、VC, VEの2重(同時)不足が(1)記憶、学習行動に及ぼす影響、(2)脂質代謝に及ぼす影響、並びに(3)慢性的なVC, VE不足が老化そのものに及ぼす影響や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アルツハイマー病など加齢疾患の発症に及ぼす影響を明らかにする。 平成29年度、SMP30/α-TTPダブルノックアウトマウスを用いた脂質代謝解析により、ビタミンCとビタミンEの両方が同時に不足すると脂肪組織や血中遊離脂肪酸が減少することを明らかにした。また、SMP30/α-TTPダブルノックアウトマウスの肝臓では、脂肪酸や中性脂肪の合成を制御する転写因子(SREBP1c)、脂肪酸のβ酸化を制御する転写因子(PPARα)の遺伝子発現が亢進していた。これらの結果は、ビタミンCとビタミンEの同時不足により、生体内の活性酸素が増加し、肝臓での脂質代謝に影響を及ぼす可能性を示唆している。 また、SMP30/α-TTPダブルノックアウトマウスを用いた寿命解析から、ビタミンCとビタミンEの両方が不足すると、ビタミンCまたはビタミンE単独の不足よりも寿命が短くなることを明らかにした。
|