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2016 年度 実績報告書

Ash dieback病原菌の起源地周辺での生態、多様性と移入病原菌リスク評価

研究課題

研究課題/領域番号 15H04506
研究機関筑波大学

研究代表者

山岡 裕一  筑波大学, 生命環境系, 教授 (00220236)

研究分担者 出川 洋介  筑波大学, 生命環境系, 助教 (00311431)
細江 智夫  星薬科大学, 薬学部, 教授 (10287849)
石賀 康博  筑波大学, 生命環境系, 助教 (50730256)
岡根 泉  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60260171)
細矢 剛  独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (60392536)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード菌類 / 植物病理学 / 樹病学 / 分類学
研究実績の概要

ヤチダモ上におけるHymenoscyphus fraxineusの生活環を野外調査ならびにDNA検出と分離・培養を併用して調査したところ、本菌は、前年に落葉した葉軸上に形成した子嚢盤から子嚢胞子を放出し新葉に感染後、展葉期には内生的に生葉組織内に生息し、落葉期後に活発に増殖することが分かった。また、落葉した葉軸上では、12月までには分生子(不動精子)を形成し交配が可能となり、その後、偽菌核層が発達し葉軸が偽菌核化することが分かった。
Norwegian forest and landscape instituteのDr. H. Solheim らが実施するノルウェーにおけるAsh dieback発生生態調査ならびにセミナーに参加し、本病害の発生の状況、発病・伝染のパターンなどの生態に関する基礎情報を収集するとともに、日本でのヤチダモ上での生態、接種試験結果について紹介し、ヨーロッパと日本での本菌の生態的差異等について意見交換を行った。
北海道で植栽されているセイヨウトネリコ、アメリカトネリコ、ビロードトネリコの中に、Ash dieback に類似した症状を示している樹木と示していない樹木を発見した。これらの樹木がH. fraxineusの感染を受けているかを確認するため、各樹木から採取した生葉をリターバックにいれ、次年度子嚢盤形成させるため試料を設置した。また、これらの生葉から内生菌の分離を行い、主要な菌類の同定を行った。
ヤチダモとRaywood ash (F. augustifolia subsp. oxycarpa) の苗を、野外でH. fraxineusの子嚢胞子に暴露接種したところ、ヤチダモでは病徴は見られなかったが、Raywood ashの苗では、翌年6月には新葉の展開がなく、冬期中に枝が枯死し、両者で本菌に対する感受性に明らかに差があることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヤチダモ上での本菌の生態についてほぼ明らかにすることができ、ヨーロッパのセイヨウトネリコ上での本菌の挙動との差異が明確になった。また、海外での報告、本研究での生態調査、接種試験の結果から、樹種による本菌に対する抵抗性反応の差異が、Ash diebackの発病に大きく影響していることが示唆された。一方、今回の調査の中で、国内に植栽されている外国産トネリコ属の中にはAsh diebackと類似の症状を示している樹木と示していない樹木が生存することが分かった。今後、本菌の感染の有無、本菌の感染に対する反応の差異、内生菌類相の差異を明確にするとともに、ヤチダモとRaywood ashの苗を用いた接種試験による抵抗性発現パターンの違いを調査することにより、本病の発病のメカニズムを解明するとともに、新たの防除法の指針を示すことができると考える。
トネリコ属植物に寄生しているH. fraxineusと関連種の多様性については予想より低いという結果を得ている。北海道に於いては、外国産の種も含めてヤチダモ以外のトネリコ属に、本菌が広く感染している可能性が示唆されており、確認するための試験設定を行った。
これまで、viridiolが病原毒素と考ええられてきたが、それを否定する報告も出された。そのため、より広範囲の化合物を対象とできるよう現在バイオアッセイ系を再構築している。

今後の研究の推進方策

トネリコ属植物の病害発生調査と菌類相調査、およびトネリコ属植物と関係するH. fraxineusとその類縁種の多様性:北海道で植栽されているセイヨウトネリコ、ビロードトネリコなどのトネリコ属植物の生葉、枝へのfraxineusまたはその類縁種の感染、落葉葉軸上での子嚢盤形成を調査し、これらトネリコ属植物上でのH. fraxineusとその類縁種の生態、Ash dieback発病への関与を明らかにする。
H. fraxineusとその類縁菌の病原性およびトネリコ属植物の抵抗性評価:ヤチダモとRaywood ashの苗にH. fraxineusを接種し,両者の抵抗性発現パターン違いを明らかにする。H. fraxineus類縁菌を用いたトネリコ属植物に対する接種試験を行い、反応の差異を調査し、これら菌類の病原菌としての危険度を評価する。
H. fraxineusによるAsh dieback 発病メカニズムの解明:病原毒素を探索し、その物質のトネリコ属植物に対する作用を明らかにし、Ash dieback 発病に対する関与の有無を明らかにする。
内生菌類等のH. fraxineus拮抗微生物の探索:H. fraxineusとこれまでに分離した内生菌類との相互作用を調査し、H. fraxineusによるAsh dieback発病抑制効果の可能性を探る。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Nor. Inst. Bioeconomy Research (NIBIO)(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      Nor. Inst. Bioeconomy Research (NIBIO)
  • [学会発表] Inoculation experiments with Japanese isolates of Hymenoscyphus fraxineus2016

    • 著者名/発表者名
      Yamaoka, Y. and Okane, I.
    • 学会等名
      Ash dieback seminar
    • 発表場所
      NIBIO, As, Norway
    • 年月日
      2016-08-11
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ash dieback pathogen, Hymenoscyphus fraxineus endophytically existed in the leaves of Fraxinus mandshurica in Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Okane, I. and Yamaoka, Y.
    • 学会等名
      Ash dieback seminar
    • 発表場所
      NIBIO, As, Norway
    • 年月日
      2016-08-11
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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