研究課題/領域番号 |
15H04507
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10301079)
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研究分担者 |
小川 泰浩 国立研究開発法人 森林総合研究所, 水土保全研究領域, 主任研究員 (50353628)
田村 憲司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70211373)
廣田 充 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90391151)
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00420076)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生態系修復 / 緑化 / 火山荒廃地 / 三宅島 / 自生種 / 遷移初期種 |
研究実績の概要 |
緑化試験区の設置:三宅島の火山荒廃地斜面上に、約3,000平方メートルの緑化試験区と対称区を設置した。緑化試験地内では、長さ約1mの東京クレセントロール(以下、ToCR) 245個を豪雨時に地表に発生する水みち(リル)を中心に設置し、15個については、三宅島で採集したハチジョウススキ(以下、ススキ)、オオバヤシャブシ(以下、ヤシャブシ)、ハチジョウイタドリ(以下、イタドリ)の種子を播種した。植生回復と地形変化をモニタリングするために、上空からの写真撮影を行った。 ToCRの機能評価:ToCRのもつ侵食土砂の調節プロセスを検証した。前述の緑化試験区に隣接した荒廃地斜面のリルにToCR(弦長1.5m)を1個おき、その隣のリルと合わせて2つのリルで地表流を観測するための水位計と量水堰(流量観測施設と呼ぶ)を設置し、9月に1分間隔で計測を開始した。1月には、土砂流出の変動を解明するため流量観測施設に流入する地表流や流出土砂の変動を明らかにするため定点カメラを設置した。 遷移初期植物の生態評価:火山荒廃地に生育するヤシャブシ、ススキ、イタドリの3種を対象として、葉の窒素含量とリン含量を測定した。また、回収率を推定するため、枯死葉についても採集し同様の測定を行った。なお、窒素についてはNCアナライザー、リンについては、プラズマ発光分光分析装置を用いた。ヤシャブシ、ススキ、イタドリの葉の窒素回収率はそれぞれ、39.7±10.6 %、73.7±17.8 %、65.9±7.5 %であり、リン回収率についてはそれぞれ、46.6±24.8 %、87.1±8.6 %、84.4±2.4 %であった。ヤシャブシは養分回収率が低く、リター供給による養分付加効果が高い可能性が示唆された。2015年11月と2016年3月に三宅島現地において、ススキを対象とした光合成の予備測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度内に三宅島内に緑化試験地を設け、実際に東京クレセントロールを設置することができた点で、順調に進展していると判断した。また、流量観測施設の設置するとともに、光合成測定、土壌と植物体のサンプリングと分析を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新設した緑化試験地においてモニタリング調査を行い、緑化の面的な効果を検証してゆく。地表流の水位変動をToCRと対照区を比較し、ToCRの設置による流出過程の変化を明らかにし、ToCRが荒廃地の環境調節(植生の侵入促進など)効果を検討する。遷移初期植物種の生態的評価をするために、葉の成分、光合成測定、生育地の土壌条件等のデータ収集を行い、定量的なデータを集積する。
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