研究課題/領域番号 |
15H04509
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 克己 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 教授 (80211895)
|
研究分担者 |
則定 真利子 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 助教 (00463886)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 植物 / ストレス / 林学 / 酵素 / 遺伝子 / 根圏低酸素 / 熱帯樹木 / 環境造林 |
研究実績の概要 |
Melaleuca cajuputiとEucalyptus camaldulensisの根圏低酸素環境下での根におけるリグニン生合成に関与する芳香族代謝を調べた。低酸素処理2日後のM. cajuputiの根でフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)の活性が低下し、ケイ皮酸濃度が減少したが、E. camaldulensisの根ではPAL活性の低下はみられなかった。13Cを用いた標識実験による確認が必要だが、根圏低酸素環境下のM. cajuputiの根ではリグニンへの光合成産物の分配が減少すると考えられる。 M. cajuputiとE. camaldulensisの水耕苗について、4日間の根圏低酸素ストレス処理に対する根の遺伝子発現応答をRNA-Seq法により解析するために、細根からRNAを抽出し、de novoアセンブリにより発現量解析を行った。今後、得られたコンティグについてシロイヌナズナやE. grandisの遺伝子情報データベースを対象にアノテーションを進めて低酸素ストレスに応答する遺伝子の絞り込みを行う。 Acacia mangiumとE. camaldulensis、Syzygium kunstleri、S. longiflorumについて、M. cajuputiを適宜比較種として用いながら根圏低酸素ストレスへの応答を調べた。根圏低酸素処理によって、M. cajuputiとS. kunstleri以外の種で根もしくは茎の空隙率が増加したが、気孔閉鎖をともなう光合成速度の低下がみられ、M. cajuputi以外の全種で樹高成長が低下した。M. cajuputiとE. camaldulensisの側根のエネルギー充足率は低酸素処理で低下しなかったが、Syzygium属2種は低下した。 酸素呼吸の指標となるユビキノンの酸化還元比の測定法を確立した。今後、その比を指標として通気組織の発達の時系列変化を調べる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
根圏低酸素環境がMelaleuca cajuputiの根における糖の利用様式に与える影響を明らかにするための13Cを用いた標識実験の結果は次年度に持ち越しになったものの、他は順調に進捗している。次年度には計画通りの進捗状況となる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
RNA-Seqの結果の解析を進め、低酸素ストレス応答性のある炭素代謝関連遺伝子群を絞り込み、発現様式を明らかにする。M. cajuputiのミトコンドリアの無酸素環境下でのATP生産の実態を明らかにするための実験を進める。また、新たに種子等を入手した熱帯造林候補樹種について苗を育成し、根圏低酸素ストレス応答のデータの蓄積を進める。
|