研究課題
1980年代以来、奥羽山系試験地(カヌマ沢渓畔林)および阿武隈試験地(小川植物群落保護林)では、基本的なプロットのデザインを共有しつつ種子生産量/落葉量を測定するトラップ調査を行ってきた。本年度は、カヌマ沢渓畔林での25年間(1990~2014)の開花量と種子生産量のデータのコンパイルに主に時間を割いた。主要樹種4種の20世紀末からの開花の年変動の傾向についての暫定的な解析結果を国際学会で発表した。その他の樹種については、過去のデータの種子の品質(健全/虫食い/シイナ等)の記録がなかったり重量との整合性がなかった部分を保管してあるサンプルにあたって再度仕分け、秤量した。現時点で、奥羽山系試験地については約20種ほどのデータセットが利用可能になりつつある。阿武隈試験地については、開花量のコンパイル、種子の品質についての呼称の調整を進めているところであり、この作業にしばらく時間を要する見込みである。このほか、2016年は奥羽山系試験地で直径1~5cmクラスの稚樹の全木調査を完了し、約4000本の稚樹データが従来の5cm以上を対象とした毎木調査(5700本)と同じ方法によって得られた。このデータを稚樹・成木を統合して解析できるように、萌芽個体や実生調査からの持ち上がりについて個体番号の突き合わせを行い、複数のデータセットを横断して統合して解析できるめどが立ちつつある。来年度中には具体的な解析を実施できる見込みである。阿武隈試験地についてはこのデータ統合作業の途上である。
2: おおむね順調に進展している
直径1cm以上の全稚樹の毎木調査データについては概ね想定通りに進んでいると評価できるが、種子データのコンパイルについては、過去のデータにおいて重量の測り忘れや入力のおかしな点について保存してあるサンプルを再チェックしたうえで修正する必要のあるチェック項目も想定より多く、そのために想定よりデータセットの作成が遅れている。
今年度は、奥羽山系試験地の開花結実データを1990~2015年の26年分のエラーチェックが今年度早々には完了する見込みであることから、これをデータペーパーとして投稿する。合わせて、これを使った解析に統計モデルを適用して原著論文として発表する方向付けを確定させる。阿武隈試験地については、開花データのコンパイルを引き続き進める。直径1cm以上の全稚樹の毎木調査データについては、早い段階でデータの統合利用が可能の段階まで情報の整理を進め、阿武隈、奥羽の各試験地でオリジナルなアイディアに基づく解析事例を出す。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
森林総合研究所研究報告
巻: - ページ: -
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