研究課題
1980年代以来、奥羽山系試験地(カヌマ沢渓畔林)および阿武隈試験地(小川植物群落保護林)では、基本的なプロットのデザインを共有しつつ種子生産量/落葉量を測定するトラップ調査を行ってきた。本年度は、カヌマ沢渓畔林での26年間(1990~2016)の開花量と種子生産量のデータのコンパイルのほか、開花量の変動パターンを解析した。また、奥羽山系試験地の1cm毎木データから調査手法を検討する解析を実施した。直径1~5cmクラスの稚樹全数調査(約3700本)とコドラート抽出法による稚樹調査のデータから、全数調査の必要性を評価した。従来のコドラート抽出法でよく採用される2m×2mの大きさを基準サイズとして、(1)コドラートの配置は10m間隔で規則的に、その位置は10m×10mのサブプロットの四隅それぞれの場合、(2)コドラートの位置を10m×10mのサブプロットの四隅のどれか一つに固定し、コドラートサイズを基準サイズの2m×2mから9m×9mまで大きくしていって全数調査に近づけた場合、(3) コドラートの位置はランダムに、サイズも2m×2mから9m×9mまで大きくしてコドラートの位置とサイズを網羅的に調べる場合、の3パターンについて、それぞれ1000回反復の計算シミュレーションを行った。その結果どのパターンでも、プロット内の稚樹本数についてはコドラート抽出法で十分な精度の結果が得られた一方、各計算試行ごとに描いた種順位曲線では、試験地全体の優占種である上位8種であっても、その順位は1~6位まで変動した。以上より、コドラート法は、林分ベースの定量的なパラメータの推定や特定の種個体群の構造記載には有効であるものの、種間関係に関しては(少なくとも奥羽山系試験地では)、結果の解釈に注意が必要である。つまり、本数の多い稚樹であっても可能な限り全数調査を行うことが好ましいと言える。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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