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2017 年度 実績報告書

一斉更新過程における”陣取り”の役割ータケササ類のクローン特性の進化と適応的意義

研究課題

研究課題/領域番号 15H04518
研究機関秋田県立大学

研究代表者

蒔田 明史  秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (60315596)

研究分担者 鈴木 準一郎  首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00291237)
陶山 佳久  東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
富松 裕  山形大学, 理学部, 准教授 (40555398)
齋藤 智之  国立研究開発法人森林研究・整備機構, その他部局等, 主任研究員 等 (00414483)
井上 みずき  日本大学, 文理学部, 准教授 (80432342)
立木 佑弥  京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定研究員 (40741799)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードジェネット動態 / クローン成長 / Bamboo / 地下茎 / 生理的統合 / 開花習性 / 一斉更新
研究実績の概要

長寿命一回繁殖性植物であり、しばしば広域にわたって同調開花するという特異的なタケササの生活史を理解するためには、クローン特性が更新成功にどのように関わっているかを明らかにすることが必要である。本研究では、一斉開花枯死後のササの更新過程に着目し、クローン特性が群落形成過程に果たす役割を検証する。叢生型地下茎をもち、株立ちする熱帯のタケとは異なり、北半球温帯のタケは水平に伸長する単軸型地下茎を有している。一斉枯死後に、林床という不均質な環境下でただ一度の更新機会で確実に成功するためにそうしたクローン特性が場を占める(”陣取り”)ためにどのように機能しているかを明らかにし、それをもとにタケササ類の地下茎伸長様式の進化モデルを提唱し、クローン特性の進化とその適応的意義に迫ることが本研究の目的である。
本年度は、1)混合型の地下茎を有するチシマザサを対象とし、1995年に一斉開花枯死した十和田湖畔のブナ林でのチシマザサ実生由来個体群の動態についての調査を継続した。更新初期では、林内の不均質な光環境を反映してササの回復状況に粗密が生じるが、その後ギャップなど明るい場所で十分成長したジェネットが地下茎により林内に侵入することによって急速に回復が進むことを明らかにし、林内の不均質な環境にまたがって分布するジェネットの存在が林内全域のササの回復を加速していることを明らかにした(Matsuo et al. 2018)。2)また、閉鎖林冠下での地下茎切断実験を継続して行い、実験開始後3年間では、侵入ジェネットは地下茎を切断されたとしても特に成長が低下する傾向は認められず、明確な物質転流の効果は認められなかった。また、3)タイにおいて熱帯性タケ類のクローン構造と開花習性について踏査と情報収集をおこない、二度にわたる国際セミナーを開いて、熱帯と温帯のタケとの差異についての議論を深めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題は、研究代表者らが長期にわたり継続している共同研究であり、長期研究でなければ得られない成果がまとまりつつある。Bambooの中でも、林床に適応して進化したと考えられるササは、林内の不均質な環境下にまたがってクローン成長をすることにより適応度を高めているのではないかと予想していたが、長期研究の結果、一斉開花枯死後の更新過程において群落の回復を早めているのがクローン成長による個体の平面的分布拡大であることを明らかにしたのは大きな成果であると思われる。
その一方、当初計画していた生理的統合に関する物質転流実験については本年度実施できなかった。当調査地の近辺でクマによる人的被害が出たために、安全性を考えて調査頻度を下げたためである。この点については、当面様子を見ながらの調査となるが、生理的統合については切断実験の結果も蓄積しており、この実験を継続することにより十分な成果を上げることができると考えている。

今後の研究の推進方策

今後の研究については二つの方向性が見えている。一つは、本研究課題では林内の不均質な環境がササの回復過程について与える影響を明らかにしてきたが、今後、逆にササの回復が森林構成種に対して与える影響についても明らかにし、林内の不均質性を介したササと林冠木の相互依存的なフィードバック機構を明らかにした。
また、bambooの進化を考えるに当たって、クローン成長様式が有性生殖の繁殖成功度に与える影響に関しての研究蓄積を基盤として、熱帯から温帯へのbambooの進化におけるクローン成長様式を探りたい。そのために、日本から中国、タイへと経度にそったクローン様式と開花習性等の生態学的特性の変化を探ってみたい。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Genet dynamics of a regenerating dwarf bamboo population across heterogeneous light environments2018

    • 著者名/発表者名
      Matsuo, A., Tomimatsu, H., Sangetsu, Y., Suyama, Y. and Makita, A.
    • 雑誌名

      Ecology and Evolution

      巻: 8 ページ: 1746-1757

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1002/ece3.3793

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Recovery process of a dwarf bamboo (Sasa kurilensis) population for 19 years after synchronous flowering and die-off.2017

    • 著者名/発表者名
      AikawaN, TomimatsuH, MatsuoA., SangetsuY. ,MakitaA.
    • 雑誌名

      Bamboo Journal

      巻: 30 ページ: 8-17

    • 査読あり
  • [雑誌論文] モジュール性から見たクローン性:クローナル植物とクローン性を示す他の生物群の比較2017

    • 著者名/発表者名
      鈴木準一郎
    • 雑誌名

      日本生態学会誌

      巻: 67 ページ: 181-187

    • 査読あり
  • [学会発表] 中部地方で一斉開花したスズタケの繁殖特性2018

    • 著者名/発表者名
      齋藤智之・中川弥智子・星野大介・酒井武・岡本透・依田浩輝・栗田悟・鈴木智晴・野口和幸
    • 学会等名
      第129回日本森林学会大会
  • [学会発表] 中部地方におけるスズタケの2017 年一斉開花の範囲2018

    • 著者名/発表者名
      岡本透・齋藤智之・星野大介
    • 学会等名
      第129回日本森林学会大会
  • [学会発表] 120 年ぶりに開花したスズタケ種子の形態的・生理的特性2018

    • 著者名/発表者名
      木村(加藤) 恵, 川村 遼馬, 井上 みずき, 齋藤 智之
    • 学会等名
      日本生態学会第65回全国大会
  • [学会発表] ササが枯れると本当にブナは更新できるのだろうか・・・ササ枯死後21年間のブナ稚樹の動態2018

    • 著者名/発表者名
      蒔田明史, 宮島誠志郎, 高木豊大, 佐藤朋華, 松尾歩, 阿部みどり, 星崎和彦
    • 学会等名
      日本生態学会第65回全国大会
  • [学会発表] Spatial distribution of dwarf bamboo shoots in an abandoned coppice forest at early successional stages.2017

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, J.-I.
    • 学会等名
      INTECOL 2017 Beijin 12th Iinternational Congress of Ecology,
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] スズタケの種子散布前の種子食害率:開花規模の異なる集団間の比較2017

    • 著者名/発表者名
      坂田ゆず、上山芝穂、蒔田明史
    • 学会等名
      第 49 回種生物学シンポジウム
  • [学会発表] 一斉枯死後のチシマザサ個体群の長期動態:クローン成長とバイオマス回復への寄与2017

    • 著者名/発表者名
      富松裕・金子悠一郎・谷口稜太郎・大矢陽太・工藤恵梨・松尾歩・陶山佳久・蒔田明史
    • 学会等名
      第 49 回種生物学シンポジウム
  • [学会発表] Bamboo studies using MIG-seq: an novel genome-wide sequencing method2017

    • 著者名/発表者名
      Suyama Y.
    • 学会等名
      International meeting on" Research wrap-up on temperate and tropical bamboos"
    • 国際学会
  • [学会発表] Perspective of flowering behavior and regeneration process in temperate bamboos, Japan.2017

    • 著者名/発表者名
      Makita A.
    • 学会等名
      International meeting on" Research wrap-up on temperate and tropical bamboos"
    • 国際学会
  • [備考] 研究者総覧 蒔田明史

    • URL

      http://www.akita-pu.ac.jp/stic/souran/scholar/detail.php?id=66

  • [備考] 一斉枯死したササ群落は何年で回復するのか? -クローナル植物の面白さを探るー

    • URL

      http://www.akita-pu.ac.jp/stic/souran/study/detail.php?id=75

  • [備考] 森林でどのようにササが密生するか?

    • URL

      http://www.akita-pu.ac.jp/columnitem.htm?serial_no=715

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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