前年度までに、高空隙率かつ大比表面積のキセロゲルを調製するプロセスを確立した。しかし、得られたキセロゲルは不透明であり、超臨界乾燥で得られるエアロゲルのような光透過性はなかった。この原因として、キセロゲルの表面粗さが想定された。キセロゲルは湿潤ゲルの蒸発乾燥によって形成するが、乾燥の際に不均一に収縮してしまう。そこで、溶媒をゲルの側面のみから蒸発させるために、蒸発乾燥時にゲルの上下面をプレートで覆い、溶媒蒸発をゲルの側面方向に限定することとした。その結果、キセロゲルは平滑な膜状となり、光透過性を発現した。すなわち、キセロゲルの不透明性は表面粗さに起因するものであり、乾燥の方向性を制御することで光透過性を発現させることが可能であることが判明した。 得られた膜状キセロゲルの空隙率と比表面積を測定したところ、乾燥の方向性を制御していないブロック状のキセロゲルと比べて、低下してしまっていた。これは、膜状キセロゲルがプレートで挟んで乾燥させており、圧縮応力がかかった状態で溶媒が抜けていることが原因として挙げられる。すなわち、乾燥時に細孔がつぶれてしまっていることが想定される。一方で力学特性について評価したところ、非常に良好な結果が得られた。超臨界乾燥で得られるエアロゲルの課題として、柔らかいこと(低弾性率)であることが挙げられるが、本検討で得られた膜状キセロゲルは、構造用途で使われるプラスチック並み(例えばPETフィルム)に堅いことが明らかとなった。しかし、熱伝導率はエアロゲルよりも数倍高く、断熱用途を想定するためには、空隙率と比表面積の向上が課題であることが明確となった。すなわち、乾燥の方向性を制御することは光透過性の発現に有効であることが分かったが、その工程で細孔が潰れてしまうという課題を解決することが必要である。
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