研究課題/領域番号 |
15H04528
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 剛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40230809)
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研究分担者 |
柳川 綾 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (70628700)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 木材食害性昆虫 / ケミカルフリー工法 / 熱処理 / 昆虫寄生菌 |
研究実績の概要 |
平成27年度については、①木材食害性昆虫類の高温耐性の評価、②シロアリ駆除に効果的な菌類の選抜、③高温スポット処理装置による木質部材処理方法の基礎的検討、の3点について検討を行った。 ①木材食害性昆虫類の高温耐性の評価:現在乾材害虫として最も被害が多いと考えられているアフリカヒラタキクイムシ幼虫を用い、高真空条件と低真空条件下で、温度処理への耐性を調査した。その結果、a)高真空(0.0011 MPa)、25℃環境下で12 時間以上保持した場合、死虫率が100%となった。一方、40℃環境下で4時間保持することによって、25℃の場合よりも大幅に短い時間で高い死虫率が得られた。b)低真空(0.04 MPa)の場合、25℃×48 時間と40℃×16 時間で体重減少率が同程度(約10%)であったにも関わらず、40℃×16時間では、30%程度の死虫率を示した。 ②シロアリ駆除に効果的な菌類の選抜:北海道から沖縄までの日本全国の17カ所から複数のヤマトシロアリコロニを採集し、職蟻と兵蟻における寄生菌類の調査を実施した。その結果、日本ではこれまで報告されていない2種類の昆虫外部寄生菌を発見することに成功した。これらの菌類は子のう菌類に含まれ、宿主である昆虫の行動や生存期間に影響を与えるといわれており、生物的防除への応用の可能性がある。 ③木材食害性昆虫類の高温耐性の評価:現場での高温スポット処理を想定し、これまで全くデータのないヒラタキクイムシ類の高温耐性について、高周波発生装置を用いた検討を実施した。試作した高周波発生装置によるフローリング材中のアフリカヒラタキクイムシ幼虫に対する処理を試みた結果、10秒以下の短時間処理を繰り返すことによって、エネルギー消費を抑えながら完全な駆除を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、本年度実施した3項目について、それぞれ貴重なデータを蓄積することができたことから、(2)おおむね順調に推移している、と判定した。ただ、データベースでは調査できなかった文献類、例えば和文の協会誌等、について再度詳細な調査を行った結果、木材食害性昆虫類の高温耐性については、既にかなりの検討が行われていることが明らかとなったことから、急遽、真空処理との併用を考案し、実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、本年度の研究がほぼ順調に推移したことから、当初の計画に沿って進める予定である。具体的には、①高周波発生装置を用いた木質部材への現場処理を想定した各種条件の検討、②ドライアイスを用いた低温スポット処理に関する基礎的検討、③新たに発見した外部寄生菌の人工培養法の確立、④現場における熱処理および生物的処理に関するシステム構築に向けた取組、の4点について鋭意研究を進める。 研究を進める上で特に問題となる支障はない。
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