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2016 年度 実績報告書

セルロース合成酵素複合体の会合構造決定

研究課題

研究課題/領域番号 15H04530
研究機関京都大学

研究代表者

今井 友也  京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90509142)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードセルロース合成酵素複合体 / 膜タンパク質 / 酢酸菌 / 構造生物学 / 蛍光免疫顕微鏡
研究実績の概要

酢酸菌のセルロース合成酵素の機能上最小構成単位であるCesAB複合体のタンパク質精製に取り組んだ。前年度までの結果に基づき選抜した、CesAのC末欠損体とCesBの共発現系を試行したが、複合体の解離を抑える条件を見いだすには至らなかった。一方で点変異体導入により大きく構造を欠損させずに機能を欠損させる点変異体を発見し、CesAタンパク質の酵素反応機構に関する情報を得ることに成功した。
またCesAとCesBに加えてCesCとCesDを含む、より完全形に近いCesABCD複合体の発現・精製にとりかかった。構築した発現系を使って大腸菌で発現させたところ、CesA, CesB, CesCは細胞膜に、CesDは細胞膜と細胞質画分の両方に確認された。酢酸菌においても同様の分布パターンを示すことをすでに確認しており、この発現系を実験に使用できると判断し、細胞膜から複合体を可溶化する界面活性剤のスクリーニングを行った。
また上記CesABCD複合体において、各サブユニットの相互位置関係や酢酸菌細胞内での局在(内膜、外膜、細胞質内、ペリプラズム画分、細胞外)について、免疫蛍光顕微鏡法により、A,B,C,D各サブユニットの酢酸菌細胞内局在を調査した。その結果、CesAとCesDについては細胞長軸方向に沿って一直線に並ぶ様子が観察され、酢酸菌細胞に観察されるセルロース合成酵素の規則的配列「ターミナルコンプレックス(Terminal complex, TC)」にCesAとCesDが含まれることが示唆された。この観察結果はCesA(触媒サブユニット)がTC中に存在することを示す初の証拠である。さらに抗体処理に先だって行う前処理の違いが抗体ラベルにおよぼす影響の分析から、CesAは内膜に、CesDは内膜の外側と外膜の内側の領域(ペリプラズム)に存在することを支持するデータを得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

免疫蛍光顕微鏡法を使って、細胞内におけるセルロース合成酵素複合体の構造について情報を得ることができた点では研究は進んだが、構造解析に先立つタンパク質精製については、まだ方法確立への糸口は見つかっていない。タンパク質精製条件の確立が急がれる点で、研究の進捗は「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

引き続き、CesABCDおよびCesAB複合体の発現・精製条件の最適化を進める。精製条件については、界面活性剤や使用するアフィニティクロマトグラフィー条件など、基本的な条件の最適化を進める。
また本課題の最大の目的はセルロース合成酵素複合体の構造解解析からセルロース合成のメカニズム解明を目指すことだが、進捗状況も考慮に入れて、密度勾配遠心法、免疫沈降法やプルダウン・アッセイなどの生化学的手法を取り入れて、サブユニット間の相互作用や細胞内局在の分析を進める。セルロース合成酵素は複数の分子からなる複合体であることから、個々のサブユニットの立体構造(三次構造)だけでなく、サブユニット間の配置といった四次構造も、セルロース合成機能を理解する上で重要な情報であり、以上の生化学的な解析結果も含めて包括的にセルロース合成酵素複合体の全貌解明を目指す。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Site-directed mutagenesis of bacterial cellulose synthase highlights sulfur?arene interaction as key to catalysis2016

    • 著者名/発表者名
      Sun Shi-jing、Horikawa Yoshiki、Wada Masahisa、Sugiyama Junji、Imai Tomoya
    • 雑誌名

      Carbohydrate Research

      巻: 434 ページ: 99~106

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.carres.2016.08.009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Biosynthesis of cellulose: enzymatic synthesis of an assembly of molecules2017

    • 著者名/発表者名
      Tomoya Imai
    • 学会等名
      Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science (organized by Univeristy Sanis Malaysia and RISH, Kyoto University)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] セルロース合成酵素の研究からみえる細胞壁形成機構の解明の難しさ2017

    • 著者名/発表者名
      今井友也
    • 学会等名
      日本木材学会 組織と材質研究会講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 分子集合体であるセルロースの生合成機構2017

    • 著者名/発表者名
      今井友也
    • 学会等名
      第1回生物資源・次世代農業セミナー「循環型炭素資源ー植物細胞壁の研究動向」 立命館大学R-GIRO「90億人時代に向けた気候変動対応型農業の基盤創生」拠点
    • 招待講演
  • [学会発表] セルロース合成酵素のミクロフィブリル構造形成機構の解明に向けて2016

    • 著者名/発表者名
      今井友也
    • 学会等名
      第11回トランスポーター研究会
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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