研究課題/領域番号 |
15H04535
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70274363)
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研究分担者 |
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50211800)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シガテラ / Gambierdiscus |
研究実績の概要 |
Gambierdiscus 属の動態ならびに本属藻の単離・培養株の確立 高知県幡多郡大月町沿岸にて、表層、水深10 m、20 mおよび30 mから、培養株を新たに20株確立した。 次世代シーケンサーを用いた本属藻の網羅的群集組成の解明 まずKohli et al. (2014)により報告された方法に従い、上記にて述べた深い水深および表層からそれぞれ調製した微細藻類画分を鋳型として用い、Small subunit ribosomal RNA 遺伝子(SSU rDNA)の可変領域をPCR増幅させ、次世代シーケンサーを用いたパイロシーケンスを行うことにより配列を決定した。さらに、それらの網羅的系統解析を行うことにより、本属藻を含む付着性微細藻類の群集組成解析を試みた結果、水深30 m付近の微細藻類群集と表層付近の微細藻群集は異なることが示唆された。本解析には、Roche社製のGS Juniorを用いていたが、年度の途中でその配列決定に必須となるキットならびに機器のメンテナンスの打ち切りが発表されたため、その解析の一部は次年度に先送りした。 形態学的特徴による本属藻の種同定 前述した方法により確立したGambierdiscus cf. silvae属培養株を用いて、それらの細胞の大きさや、その外殻鎧板の微細な形態学的特徴について、光学顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて精査し、これがG. silvaeであることを明らかにした。 本属藻の毒性の検討 新たに確立したG. silvae培養株を、上記した条件の下でガラスシャーレ内にて培養し、これにより得られた藻体から毒成分を抽出した後、マウスを用いた毒性試験によりそれらの毒性を検討した結果、これらは本邦産のG. australesに次いで強いマウス毒性を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の達成目標について、「次世代シーケンサーを用いた本属藻の網羅的群集組成の解明」の研究項目を除いて順調に進捗した。次世代シーケンサーを用いた解析に関しては、これまで使用していた高知大学の全学共同利用施設であるRoche社製のGS Juniorが、年度の途中でその配列決定に必須となるキットならびに機器のメンテナンスの打ち切りがRoche社から発表されたことにより、その解析の一部を行うことが出来なくなり、これを次年度に先送りしたため、全体の進捗状況としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーを用いた本属藻の網羅的群集組成の解明 前年度から先送りした次世代シーケンサーを用いたパイロシーケンスについては、新たに導入したイルミナ社製のMiSeqを用いて、現場海域に発生する本属藻の網羅的系統解析を行うことにより、本属藻を含む付着性微細藻類の群集組成解析を試みる。 各種環境条件(水温・塩分・光強度・窒素/リン添加)が本属藻の増殖に及ぼす影響評価 まず、これまでに確立した深い水深より得られたGambierdiscus 属の株を、IMK/2、IMK、f/2、PES、SWM-3培地においてそれぞれ培養し、最も良好な増殖が見られる培地を選抜する。さらに、水温15~30℃における4段階ならびに塩分20~40における5段階の組み合わせ条件下にて、ステップワイズ法を用いて本属藻各種を段階的に馴致させながら培養し、それぞれの培養系における増殖速度を求める。これにより、各種の増殖可能あるいは増殖至適水温・塩分をそれぞれ明らかにする。また、光強度可変型恒温培養装置を用い、3~1,500 µmol photons m-2 s-1の範囲における12段階の光条件の下で本属各種を培養し、それぞれにおける増殖速度を求め、これらに基づき各種の光応答曲線を求める。後者に基づき各種の増殖可能あるいは増殖至適光強度をそれぞれ解明する。さらに、Lartigue et al.(2009)の方法に従って、無機態窒素・リンおよび有機態窒素・リンを様々な濃度で各種の培養系に添加し、経時的にそれらにおける細胞密度を求め増殖を評価することにより、窒素・リン添加が本属各種の増殖に及ぼす影響を解明する。
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