研究課題/領域番号 |
15H04536
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
栗原 晴子 琉球大学, 理学部, 助教 (40397568)
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研究分担者 |
川合 美千代 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50601382)
藤井 賢彦 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (60443925)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋酸性化 / 沿岸 / 水産 / 国内 |
研究実績の概要 |
海洋酸性化は、生物生産性/生物多様性の中心を担う沿岸域の炭酸化学環境を大きく改変させ、国内の生物資源に直接影響を及ぼすことが懸念される。しかし、沿岸域での海洋酸性化の実態は未だ明らかにされておらず、さらに沿岸域をカバーした酸性化予測モデルも構築されていないため、沿岸生物への海洋酸性化の影響評価が正確に行えないのが実情である。本研究では、日本沿岸域において酸性化による生物資源への影響解明を目的に、1. 国内沿岸で高解像度の時空間的炭酸化学環境を解明し、そのデータを元に2. 沿岸域の将来酸性化予測モデルを構築し、3. 実験的に水産学的に重要な生物種(ウニ/貝/甲殻類)への酸性化の閾値を評価し、4. 評価データおよび酸性化予測モデルを元に、水産重要種に対する海洋酸性化リスク評価を実施する。 このような目的の中、本年度は国内沿岸のうち、亜熱帯域に属す場所として沖縄本島沿岸瀬底島周辺海域、温帯域に属す場所として東京湾、館山沿岸海域、及び亜寒帯域に属す場所として忍路湾沿岸海域の3箇所を選定した。さらに選定された海域の炭酸化学環境の解明を目的に、各海域にpHや塩分、水温などの各種センサー類を設置し、各海域の炭酸系の連続モニタリングの体制を構築した。沖縄沿岸では連続的な炭酸系モニタリングに加え、空間的な環境評価を行うため、瀬底島周辺海域や大浦湾に内での炭酸化学環境の測定を実施した。その結果、これら海域でのpHの日変動はΔ0.3を超え、今世紀末に予測されるpH低下に匹敵する程度の変化幅を持つことが明らかとなった。さらに、これら沿岸海域での生物への影響を評価するために、まずは沖縄沿岸生物の酸性化影響評価実験の準備を実施した。評価対象種にはサンゴ礁域での代表種としてのサンゴ、さらに水産学的有用種である、シャコガイ及びシラヒゲウニを選定し、酸性化影響評価実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各海域におけるセンサー設置に際し、センサーの不具合、さらに生物付着汚染により、安定的データを取得できないなどのトラブルが発生した。このため、沿岸域での炭酸化学環境のデータ取得やその体制の構築において、当初計画していたよりも、やや時間を要した。一方沖縄沿岸における環境データの取得に関しては、計画よりも早く開始が可能であったことから、2年目以降に予定していた本海域での生物影響評価実験は、前倒しをして開始をした。
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今後の研究の推進方策 |
温帯域(東京湾)及び亜寒帯域(忍路湾)では、生物生産が高く、設置したセンサーへの生物付着等により安定的にデータを取得することが困難であった。このため対策として、当初予定していたよりも、センサーの設置場所を沖へ移す、水深を深くするなどの対策を行った。一方亜熱帯海域でのセンサーの設置に関しては、他の海域に比較して付着生物などの影響は少なく、センサーの設置については順調に進行できたが、台風時期にはセンサーを頻繁に回収するなど必要が生じた。 また北海道では当初予定していた忍路湾沿岸(日本海)に加えて、太平洋側の定点についても加えることにより、さらなる研究の発展が見込まれることが判明したことから、新たに厚岸沿岸にもセンサーの設置体制を整えることとした。
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