研究課題
海洋酸性化は、生物生産性/生物多様性の中心を担う沿岸域の炭酸化学環境を大きく改変させ、国内の生物資源に直接影響を及ぼすことが懸念される。しかし、沿岸域での海洋酸性化の実態は未だ明らかにされておらず、さらに沿岸域をカバーした酸性化予測モデルも構築されていないため、沿岸生物への海洋酸性化の影響評価が正確に行えないのが実情である。本研究では、日本沿岸域において酸性化による生物資源への影響解明を目的に、1. 国内沿岸で高解像度の時空間的炭酸化学環境を解明し、そのデータを元に2. 沿岸域の将来酸性化予測モデルを構築し、3. 実験的に水産学的に重要な生物種(ウニ/貝/甲殻類)への酸性化の閾値を評価し、4. 評価データおよび酸性化予測モデルを元に、水産重要種に対する海洋酸性化リスク評価を実施する。本年度は、沖縄瀬底島沿岸、東京湾(館山)、東北志津川湾、北海道忍路湾および厚岸湾も5カ所にて年間の炭酸化学環境の測定を実施した。その結果志津川湾では,夏には低層では貧酸素と共に酸性化が卓越する可能性が示唆された。酸性化モニタリングに加えて、沖縄では生態学的に重要なサンゴおよび水産学的にも需要のあるシャコ貝を用いた酸性化へのアセス評価実験を実施した。加えて千葉県の館山で、水産学的重要種でもるウニ(アカウニ)の幼生を用いて、温暖化/酸性化のアセス評価実験を実施した。その結果、アカウニではこれまでの結果とは異なり、酸性化による影響を全く受けず、極めて高い耐性能力がある可能性がはじめて示唆された。これら結果から、各地域の緯度帯によって、さらには生物種によっても酸性化の影響のうけ方には大きく異なる可能性があることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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