研究課題/領域番号 |
15H04538
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研究機関 | 国立研究開発法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
鈴木 豪 国立研究開発法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (30533319)
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研究分担者 |
新里 宙也 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (70524726)
鯉渕 幸生 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (60349800)
山下 洋 国立研究開発法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (00583147)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 造礁サンゴ / 繁殖生態 / 初期生活史 |
研究実績の概要 |
サンゴ礁生態系の保全を推進するためには、気候変動に起因するサンゴの分布域変動の正確な予測が求められる。そのためには、サンゴの挙動と環境変化を包含した精緻な生態モデルの構築が不可欠である。これまでの約10年間に亘るサンゴ幼生加入データから、幼生加入量と産卵同調性が密接に関係している可能性が示唆されている。そこで、本研究では、サンゴの幼生供給量を左右すると考えられる『同時一斉産卵』における個体群レベルの同調性を定量化し、新たなサンゴ産卵-加入モデルを構築することを目的としている。 研究初年度にあたるH27年度は、琉球列島の八重山地域および沖縄本島、さらにサンゴ分布の北限付近にあたる長崎で、ミドリイシ属サンゴの成熟度と幼生加入量を同時並行的にモニタリングできるよう、定点の設置およびサンゴの個体識別を実施した。八重山地域では4月下旬および5月下旬の満月前に成熟度を記録し、約1か月後に幼生加入量の推定を実施した。その結果、成熟度は同じ時期でも場所によって異なり、4月下旬で35~50%、5月下旬で15~35%の群体が成熟していた。一方、北限付近にあたる長崎では、産卵期にあたる7月中旬および8月初旬に調査したが、成熟がほとんどみられなかった。これらのデータは今後4年間蓄積し、両者の関係を解明する。 また、過酸化水素水を用いた産卵誘発により、産卵の同調性および産卵前後の発現遺伝子および褐虫藻密度の変化を明らかにするための実験を実施した。産卵の同調性については、人工的に誘発した場合でも種および群体間で産卵のタイミングが異なり、産卵準備の個体差が大きい可能性が示唆された。産卵前後の発現遺伝子および褐虫藻密度の変化は現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度にあたる本年は、研究拠点となる八重山地域を中心に、沖縄本島、宮古島、長崎で成熟度モニタリング体制を整えることができた。また、水槽での産卵実験でも、過酸化水素を用いた産卵誘発による実験方法の確立に目途がつき、産卵前後の比較が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年に国内のモニタリング体制はほぼ整ったので、今後継続してデータを蓄積する。また新たに国外ではパラオに定点を設け、毎年モニタリングを継続する体制を整える予定である。水槽実験では、群体密度による受精効率の推定、産卵前後の発現遺伝子の解析などを進めていく。さらに、産卵タイミングを直接記録できる機器の開発も同時に実施していく予定である。
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