研究課題/領域番号 |
15H04539
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三上 浩司 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (40222319)
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研究分担者 |
細川 雅史 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10241374)
横山 雄彦 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (60296431)
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60303757)
加藤 敦之 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90177428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スサビノリ / 低温ストレス / 色落ち / 低温耐性株 |
研究実績の概要 |
日本の海面養殖で最も重要な大規模ノリ養殖の北限は宮城県であり、現在では、東日本大震災による壊滅的な打撃からほぼ復興が進み、養殖が軌道に乗り始めている。しかし、東北地方においては、春先の海水温低下が原因と思われる色落ちによる品質低下が大きな問題点である。これまでのノリ研究は、西日本の貧栄養に伴う色落ちに特化しており、低温と色落ちに関する研究は行われてこなかった。これらの背景のもと、本研究では、低温依存的な色落ちの分子機構の解明や東北地方に適した低温耐性株の取得を目的として昨年度より研究を進めており、今年度は下記に示す2つの大きな進展があった。 1つは、昨年度取得した低温耐性株の室内培養を可能にした上で、その生長と温度の関係を調べたところ、強い低温耐性を示すと同時に、20℃で最も生長速度が速いことから比較的強い高温耐性能も持つことが確かめられた。この予想外の結果から、得られた変異株は広い生育温度範囲内で野生株よりも常に高生長を示す優良品種であることが確かめられた。 もう1つは、低温依存的な色落ちに関する生理学的な知見である。すなわち、野生株では、生育温度が5℃以下の低温になると生育に必須な窒素源を取り込むトランスポーター(アンモニウムトランスポーターや硝酸トランスポーター)の活性が抑制されており、そのため細胞内で光合成色素タンパク質の分解が飽きることで低温依存的な色落ちが生じることを明らかとした。低温による窒素源トランスポーターの活性低下は新規の知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北地方のノリ養殖現場では、春先の海水温低下による色落ちが問題になっている。そのため、色落ちしない低温耐性株の取得と低温ストレス応答の生物学的な研究を両立して進める必要がある。本年度は、まず、昨年度取得した低温耐性株を宮城県漁業組合の協力を得て養殖現場で育てる試みを行った。しかし、漁業者の都合により秋口の養殖となってしまい、希望した春先での生育のモニターができなかった。一方で、研究室内で低温耐性株の生長と温度の関係を調べたところ、比較的強い高温耐性能も持つという予想外の性質が確かめられた。また、5℃以下の低温環境下では、窒素源を取り込む輸送体の活性が抑制されことで色落ちが生じるといった新規の知見を得ることができた。 以上より、変異株の養殖現場での生育観察以外は予想以上の成果があがっているため、全体としては概ね順調な進展に該当する。
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今後の研究の推進方策 |
ノリ漁業者の都合により養殖現場での研究は困難な状況であるため、変異株が高生長を示す原因や低温依存的色落ち機構の分子制御機構についてさらに解析を進める。具体的には、比較トランスクリプトーム解析により、低温下で色落ちするときに抑制される遺伝子や低温から通常温度に戻したときに活性化される遺伝子を見出し、温度環境に応じた各種生合成経路およびシグナル伝達経路の制御機構を明らかにする。また、これらを野生株と変異株で比較することで、変異株の高生長に関わる原因遺伝子の候補を見いだす。さらに、変異株と野生株を交雑し、高生長能と高低温耐性能を合わせ持つ養殖品種の作出も試みる。 以上の解析を通して、これまで解析されてこなかった低温依存的な色落ち発生機構を明らかにすることで生物学的な新規知見を取得し、さらに商品価値の高い養殖品種を作出することで、基礎と応用の両面で東北地方のノリ養殖の発展に貢献していきたい。
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