研究課題
日本の海面養殖で最も重要な大規模ノリ養殖の北限は宮城県であり、現在では、東日本大震災による壊滅的な打撃からほぼ復興が進み 、養殖が軌道に乗り始めている。しかし、東北地方においては、春先の海水温低下が原因と思われる色落ちによる品質低下が大きな問題点となっている。これまでのノリ研究は、西日本の貧栄養に伴う色落ちに特化しており、低温と色落ちの関連については研究例がほとんどない。このような背景のもと、本研究では、低温依存的な色落ちの発生機構の解明や東北地方に適した低温耐性株の取得を目的として過去2年間研究を進め成果をあげてきたが、それに加えて今年度では下記の2つの大きな進展があった。初年度同定した低温耐性株が、広い生育温度範囲内で野生株よりも常に高生長を示す優良品種であることはすでに明らかとしているが、その生活環を詳しく解析したところ、野生株とは異なり、生殖細胞の受精を伴わない世代交代をしていることが確かめられた。また、傷害ストレスにより無性生殖が活発になり、種苗生産に有効な胞子が野生株に比べて大量に得られることも見出した。そのため、得られた品種は、アマノリ類では世界で初めてとなる世代交代変異株で、しかも種苗生産が効率よく行われるため、高生長養殖品種としての有効性が強く示唆された。今後の養殖試験に期待が持たれる。さらに、極めて強い低温ストレス耐性を持っている天然のアマノリ類を数種類見出すことができた。これらは全て北海道の桧山管内にある江差町において、真冬の2月と春先の3月に採取されたもので、いずれも新種の可能性が高いものである。最大の特徴として0℃でも生存・生長することがあげられ、既知の野生および養殖アマノリ類とは次元の異なる超低温耐性アマノリと言える。現在、このような強力な低温耐性能を司る制御機構の解析とその新しい低温耐性養殖品種作成への活用法の検討を進めている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Biosci. Biotechnol. Biochem.
巻: 82 ページ: 268-273
10.1080/09168451.2017.1423228
Mar. Environ. Res.
巻: 136 ページ: 印刷中
10.1016/j.marenvres.2018.02.003
Mar. Biotechnol.
巻: 20 ページ: 印刷中
10.1007/s10126-018-9823-7
Aquac. Res.
巻: 48 ページ: 5363-5372
doi.org/10.1111/are.13350
Bot. Mar.
巻: 60 ページ: 153-170
doi.org/10.1515/bot-2016-0056
Algal Res.
巻: 26 ページ: 123-130
doi.org/10.1016/j.algal.2017.07.010
巻: 81 ページ: 1681-1686
10.1080/09168451.2017.1340090
J. Appl. Phycol.
巻: 29 ページ: 2617-2626
10.1007/s10811-017-1196-1
http://www2.fish.hokudai.ac.jp/faculty-member/mikami-kohji