研究課題/領域番号 |
15H04542
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊池 潔 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20292790)
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研究分担者 |
小山 喬 東京大学, 農学生命科学研究科, 研究員 (40749701)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性決定 / 生殖 / 遺伝 / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
多くの魚類において、その性は遺伝子により決定されている。しかしそれらの性決定遺伝子は、しばしば種間で保存されておらず、トラフグやメダカなどを除いたほとんどの魚種で性を決定する遺伝子は不明のままである。本研究では、多くの魚類に適用可能な「性決定遺伝子を迅速に同定するストラテジー」の確立を目指す。そのため、まずトラフグの近縁種をモデルとして新規性決定遺伝子を同定する。さらに、その手法を主要養殖魚であるブリに適用して、水産応用に直結する新規性決定遺伝子を同定する。同定された新規性決定遺伝子たちは、動物の性決定機構に関する基礎的知見をもたらすと同時に、他の魚類の性決定遺伝子の候補となり、さらなる魚種の性決定遺伝子同定を促すこととなる。
(1)新規性決定遺伝子をごく最近獲得したショウサイフグの解析家系を作出して、連鎖解析をおこなったところ、性決定遺伝子が存在するゲノム領域を限局することに成功した。(2)迅速な連鎖マッピングをおこなうため、RAD-seq法をフグに適用した。その結果、結果が容易に得られるという利点とデータ欠損値がでるという欠点を確認した。欠損値の出現を抑える手法を検討中である。(3)フグのF0世代ゲノム編集:F0世代における非モザイク性欠失体出現率を上昇させる条件の検討を行った。ターゲット領域におけるマイクロホモロジーの有無が出現率に関与する傾向がみられた。(4)ブリ性決定遺伝子座の解析:性決定遺伝子座を被覆するBACクローンを次世代シーケンサーに付した。得られたリードをiMetAMOSを用いてマルチプルアセンブリと精度評価を行った。その結果、単純繰り返し配列によるギャップを除き、ブリ性決定遺伝子座を内部に含む連続DNA配列を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を計画通りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)フグの連鎖不平衡マッピング:前年度で絞りこまれた性決定遺伝子座を解析対象とする。前年度、非血縁のショウサイフグを被覆度の低い全ゲノムシーケンシングに付しているので、解析対象領域における全SNP座を同定する。5kb毎に1 つの密度でSNP座を抽出し、高解像度融解曲線分析またはTaqMan法によるSNP判定のためのプライマーセットを作成する。非血縁の野生個体100尾(雌雄50尾ずつ)を用いた連鎖不平衡マッピングをおこない、性と関連を示す領域を検出する。徐々に解析領域を絞り込むとともにSNP密度を増していき、性決定遺伝子を同定する。 (2)フグのRNA-seqによる網羅的発現解析:網羅的発現解析単独では、性決定遺伝子を同定することは通常できない。この解析は、遺伝解析のデータと照らし合わせることではじめて性決定遺伝子の同定に大きく貢献する。性決定遺伝子は、卵巣と精巣の形態的雌雄分化が起きていない時期(雌雄未分化期)に、雄特異的あるいは雌特異的に発現している可能性が高い。このような遺伝子をリストアップするため、経時的にサンプリングした生殖腺をRNA-seq解析に付す。1 サンプルあたり約5Gbのデータを得て、分化前後および雌雄間でトランスクリプトームを比較し、上記で解析したゲノム領域と照らし合わせる。 (3)F0世代ゲノム編集による迅速な機能証明:連鎖マッピングの中で得られた候補遺伝子群の中で可能性が高いと思われるいくつかの遺伝子に関しは、本年度に機能欠失体の作出をおこなう。その表現型を調べて、性決定機能を確認する。 (4)ブリ連鎖不平衡マッピング:前年度得たSNP座をもとにフグと同様の連鎖不平衡マッピングをおこなう。ブリ野生個体100尾を用いて候補遺伝子を絞り込む。
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