研究課題/領域番号 |
15H04543
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大竹 二雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20160525)
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研究分担者 |
白井 厚太朗 東京大学, 東京大学・大気海洋研究所, 助教 (70463908)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サケ / 鱗 / 耳石 / 微量元素 / 安定同位体比 / 沖合域 / 生活史 |
研究実績の概要 |
【鱗の炭素・窒素安定同位体比分析】 前度に確立した分析手法によりサケ回帰個体数が高水準であった1982年~1984年と低水準の2011年~2013年に津軽石川(岩手県)に回帰したサケ回帰魚の鱗の炭素(δ13C)・窒素(δ15N)安定同位体比を分析した。両同位体比とも年代間で有意な違いはなく、摂餌環境に明瞭な違いはなかったものと推察された。δ15Nについては、高齢で回帰した個体で高く、また体サイズの増加と共に上昇する傾向がみられた。また、北海道静内川など北海道内の8河川から集めた回帰魚(2~7歳魚)48尾の鱗についても同様の分析を行った。この分析の結果、δ13Cは年齢、体サイズ、直近の成長量に関わらず一定の値を示したが、δ15Nは体サイズとの間に正の相関が認められた。これは成長に伴い栄養段階の高い生物を摂餌するようになることを示唆する。さらに2歳回帰魚では小型個体がむしろ大型個体よりも高い値を示した。この要因として小型個体で回帰する個体の摂餌海域の違いや代謝速度などの生理的要因が考えられる。 【耳石の微量元素、安定同位体比分析】日本産サケの回遊経路における係群間の違いを明らかにすることを目的として、日本国内(北海道4地域、本州日本海側、岩手県)の河川に回帰したサケ4歳魚計47個体の耳石の微量元素組成を分析した。分析にはLA-ICP質量分析法を用い、それぞれの個体について微量元素組成(Ca、Li、Na、Mg、K、Mn、 Zn、Sr、Ba)の生活史断面を求めた。その結果、沖合生活期に対応する耳石部分においてBa/Ca、Li/Ca、Sr/Caに周期的な変化が認められ、さらにBa/Ca、Li/Caのピーク位置と高さに系群間で違いが認められた。このことは日本産サケの回遊経路に系群による違いが存在することを示唆し、サケの沖合域における回遊が従来考えられていたよりも多様であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の成果に基づいてサケ回帰魚の鱗の安定同位体比分析を実施し、回帰高水準期と低水準期での摂餌環境に明瞭な違いがないこと、また回帰年齢や体サイズの違いによる窒素安定同位体比の違いなど重要な知見を得た。耳石の微量元素分析からは日本産サケの沖合域における回遊経路に多様性がある可能性を示唆する結果を得た。鱗、耳石の分析に関して、いずれも未だ分析個体数が十分とはいえず、今後分析個体数を増やすことにより結果の信憑性を高める必要がある。しかし、鱗、耳石の分析からいずれもサケの回遊と資源変動機構を理解する上で重要な知見が得られたことから、ほぼ計画通りに進展していると評価できる。これより、課題全体としては、当初計画通りに進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
鱗、耳石とも時間の許す限り分析個体数を増やし、分析結果の信憑性を高めるよう努力する。また、最終年度である平成29年度は、3年間の分析結果を総合して、日本産サケの回遊経路における系群間の違いを明らかにするとともに、回遊生態における系群間の違いと回帰数変動の地域間(系群間)差という観点から回帰個体数の減少要因を考察する。本課題で得られた成果について、できるだけ早く論文公表するよう努力する。
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