研究実績の概要 |
【鱗の安定同位体比分析】北海道静内川に回帰したサケ(2~6歳魚)の鱗縁辺部の窒素同位体比(δ14N)と炭素同位体比(δ13C)を分析し体長、年齢、鱗縁辺部の相対成長との関係を調べた。δ14Nは9.5~13.4‰、δ13Cは-17.6~―14.3‰であり、δ14Nと体長の間に正の相関がみられた。δ13Cではいずれとの間にも相関は見られなかった。2歳魚の中の小型個体が大型個体に比べて鱗縁辺部のδ14Nが高い傾向がみられ、また大型個体は3歳以上のより高齢の個体と同様の安定同位体比を示した。このことは、2歳で回帰する早期回帰個体群の中の小型個体の成長水域(回遊履歴)が2歳で回帰する大型個体やより高齢で回帰する個体と異なることを示唆する。 鱗の安定同位体比分析に関する上記成果については、英語論文としてまとめ、国際学術誌に投稿中である。 【耳石の微量元素分析】沖合域生活期に対応する耳石部分の微量元素は、昨年度までの研究成果と同様に各個体間での組成にBa/Sr以外に大きな相違は認められなかった。個体間にみられた耳石Ba/Srの変動については海洋環境の水域間の違いに基づいて検討する必要があるが、本課題の中では検討することができず将来の課題として残された。また、本州日本海側、北海道の各孵化場の放流稚魚の耳石微量元素組成(K/Ca, Na/Ca, mg/Ca, Zn/Ca, Mn/Ca, Sr/Ca, Ba/Ca)による産地判別については、本州の太平洋側と日本海側の間での誤判別が多く、さらに酸素・炭素安定同位体比(δ14N、δ13C)を含めた判別分析の成績はさらに低下した。これより、耳石微量元素組成に基づく産地判別は困難であるものと考えられた。
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