研究実績の概要 |
本研究では、海洋性カロテノイドによるミトコンドリア因子の発現誘導を介した脂肪組織のエネルギー消費活性化機構の解明を目的として研究を進めた。 1, 高脂肪食の投与により食餌性肥満を誘導したC57BL/6Jマウスに対し、フコキサンチンが白色脂肪組織(WAT)の増大を抑制した。褐色脂肪組織(BAT)において、UCP1に加え、PGC-1αやチトクロームCなどのミトコンドリア因子の発現がみられた。また、WATにおいてもミトコンドリア因子の発現誘導が認められ、食餌性肥満モデルにおける脂肪組織の褐色化を確認した。2, 褐色脂肪細胞および白色脂肪細胞株を用いたUCP1の発現誘導系を確立した。その条件下で、フコキサンチンの生体内代謝物であるフコキサンチノールによるUCP1 mRNAの発現誘導を見出した。3, WATでの褐色化誘導機構を解明するため、寒冷刺激やアドレナリンβ3受容体アゴニストを用いたprogenitor細胞の増殖およびマクロファージの遊走の関与を評価する実験系を確立した。4, 脂肪組織の褐色化誘導に関わる機構として、フコキサンチン投与によるアドレナリン経路の活性化を示唆する結果を得た。5, 糖尿病/肥満KK-Ayマウスにフコキサンチンを経口投与し呼気分析にて脂質、糖代謝への影響を調べた結果、糖代謝の改善と日周リズムの正常化が示唆された。6, 深所性緑藻のモツレミルより抽出したシホナキサンチンが糖尿病/肥満マウスのWAT中にUCP1およびPGC-1αの発現を誘導し、褐色化を誘導することが推察された。また、血糖値の低下に加え、血中脂質の低下作用が見られたことから、新たな活性カロテノイドとして注目された。 以上の結果は、フコキサンチンによる脂肪組織の褐色化機構とエネルギー消費の改善に関わる基盤研究として意義深い成果と考える。また、新たな機能性カロテノイドを見出したことは興味深い。
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