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2015 年度 実績報告書

海洋性カロテノイドによる脂肪細胞の褐色化を介したメタボリック症候群予防機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15H04545
研究機関北海道大学

研究代表者

細川 雅史  北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10241374)

研究分担者 岡松 優子  北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (90527178)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード海洋性カロテノイド / 脂肪組織 / ミトコンドリア / エネルギー代謝 / 褐色化 / UCP1 / フコキサンチン
研究実績の概要

本研究では、海洋性カロテノイドによるミトコンドリア因子の発現誘導を介した脂肪組織のエネルギー消費活性化機構の解明を目的として研究を進めた。
1, 高脂肪食の投与により食餌性肥満を誘導したC57BL/6Jマウスに対し、フコキサンチンが白色脂肪組織(WAT)の増大を抑制した。褐色脂肪組織(BAT)において、UCP1に加え、PGC-1αやチトクロームCなどのミトコンドリア因子の発現がみられた。また、WATにおいてもミトコンドリア因子の発現誘導が認められ、食餌性肥満モデルにおける脂肪組織の褐色化を確認した。2, 褐色脂肪細胞および白色脂肪細胞株を用いたUCP1の発現誘導系を確立した。その条件下で、フコキサンチンの生体内代謝物であるフコキサンチノールによるUCP1 mRNAの発現誘導を見出した。3, WATでの褐色化誘導機構を解明するため、寒冷刺激やアドレナリンβ3受容体アゴニストを用いたprogenitor細胞の増殖およびマクロファージの遊走の関与を評価する実験系を確立した。4, 脂肪組織の褐色化誘導に関わる機構として、フコキサンチン投与によるアドレナリン経路の活性化を示唆する結果を得た。5, 糖尿病/肥満KK-Ayマウスにフコキサンチンを経口投与し呼気分析にて脂質、糖代謝への影響を調べた結果、糖代謝の改善と日周リズムの正常化が示唆された。6, 深所性緑藻のモツレミルより抽出したシホナキサンチンが糖尿病/肥満マウスのWAT中にUCP1およびPGC-1αの発現を誘導し、褐色化を誘導することが推察された。また、血糖値の低下に加え、血中脂質の低下作用が見られたことから、新たな活性カロテノイドとして注目された。
以上の結果は、フコキサンチンによる脂肪組織の褐色化機構とエネルギー消費の改善に関わる基盤研究として意義深い成果と考える。また、新たな機能性カロテノイドを見出したことは興味深い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H27年度の研究により、海洋性カロテノイドによる脂肪組織の褐色化とエネルギー代謝亢進作用を解析するためのin vivoおよびin vitroでの基盤評価系を構築することができた。また、従来の肥満モデルマウスに加え、我々の生活環境により近い食餌性肥満誘導モデルにおいてもフコキサンチンの効果を確認することができた。具体的には、BATおよびWATの双方において、UCP1に加えそれ以外のミトコンドリア因子の発現誘導を明らかにし、当初の計画目標を達成することができた。また、褐色脂肪細胞および白色脂肪細胞を用いたUCP1発現系を確立し、フコキサンチンの代謝物による効果を確認しており、順調に計画が進行していると考える。糖尿病/肥満マウスに対する呼気分析を用いたエネルギー代謝の検討については、現在解析を進めているところであるが、糖代謝の改善を示唆する結果を得ており、今後も継続して進める予定である。
作用機構の解明において重要となる組織、細胞間相互作用の検討については、特にアドレナリン受容体経路の新たな評価系の確立とそれに関わる生体内因子の関与を示唆する結果を得ており、次年度以降の詳細な解明が期待される。
一方、フコキサンチン以外に脂肪組織の褐色化を誘導し、抗肥満効果を発現するカロテノイドとして、緑藻由来のシホナキサンチンを見出した。既に、抗肥満作用は他の研究者により報告されているが、WATにおけるUCP1の発現誘導を新たに見出した。更に、血中脂質の低下作用と肝臓における脂肪酸合成系の制御機能を見出した点は、予想以上の成果であり、今後も検討を進める計画である。
以上、現在までの進捗状況として、当初の計画通りおおむね順調に進んでいると考える。

今後の研究の推進方策

本研究は、海洋性カロテノイドによるミトコンドリア因子の発現誘導を介した脂肪細胞の褐色化作用とそれを基盤としたメタボリックシンドローム予防機構の解明を目的とする。H28年度はこれまでに確立した脂肪組織および細胞の活性化評価系を用いて作用機構の解明をはかる。
具体的には、研究代表者の細川と分担者の岡松が共同して食餌性肥満誘導マウスを用いた呼吸商および消費エネルギー量の測定を行い、海洋性カロテノイドによるエネルギー消費への影響を個体レベルで明らかにする。また、フコキサンチンのミトコンドリア因子の発現誘導に関わる作用機構の解明をはかるため、脂肪組織および脂肪細胞を用いた褐色化誘導機構の検討を行う。特に、アドレナリン経路の解析に加え、progenitor細胞の増殖やマクロファージ遊走の関与についても検討を進めることで、細胞の増殖分化や組織・細胞間相互作用の調節機能など多面的な視点からの総合的な解析を試みる。研究担当者がそれぞれの実験系を分担して進め、得られた成果について適宜情報交換を行い、研究展開をはかる。
また、フコキサンチン以外のカロテノイドによる抗肥満、メタボリックシンドローム予防効果については、細川が主体となってin vivo、in vitroの両面から更に詳細に解析を進めるとともに、脂肪組織の褐色化機構についてフコキサンチンと比較しながら検討する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] ニュートリゲノミクス解析に基づく褐藻カロテノイド、フコキサンチンの栄養機能性2015

    • 著者名/発表者名
      宮下和夫、細川雅史
    • 雑誌名

      生物の科学 遺伝

      巻: 69 ページ: 21-27

  • [雑誌論文] 褐藻カロテノイド、フコキサンチン2015

    • 著者名/発表者名
      宮下和夫、細川雅史
    • 雑誌名

      FFI Journal

      巻: 220 ページ: 101-108

  • [学会発表] 緑藻モツレミル脂質の糖尿病/肥満KK-Ayマウスの内臓脂肪蓄積および血糖値上昇への影響2015

    • 著者名/発表者名
      勝木曉美,細川雅史,宮下和夫,伊波匡彦
    • 学会等名
      第36回日本肥満学会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場、愛知県、名古屋市
    • 年月日
      2015-10-02 – 2015-10-03
  • [学会発表] 加齢マウスにおけるベージュ脂肪細胞誘導能の低下2015

    • 著者名/発表者名
      岡松優子,坪田あゆみ,小林純子,木村和弘
    • 学会等名
      第36回日本肥満学会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場、愛知県、名古屋市
    • 年月日
      2015-10-02 – 2015-10-03
  • [学会発表] 寒冷暴露における成熟褐色脂肪細胞の増殖2015

    • 著者名/発表者名
      深野圭伍,岡松優子,坪田あゆみ,小林純子,木村和弘
    • 学会等名
      第36回日本肥満学会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場、愛知県、名古屋市
    • 年月日
      2015-10-02 – 2015-10-03
  • [学会発表] マリンケミカル“アスタキサンチン”の炎症性疾患予防への有効性2015

    • 著者名/発表者名
      細川雅史
    • 学会等名
      第11回アスタキサンチン研究会
    • 発表場所
      京都府立医科大学学友会 青蓮会館、京都府、京都市
    • 年月日
      2015-09-18 – 2015-09-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 褐藻由来フコキサンチンの肥満脂肪組織における慢性炎症抑制機構2015

    • 著者名/発表者名
      細川雅史,小山海貴,勝木曉美,宮下和夫,山野由美子,和田昭盛
    • 学会等名
      第29回カロテノイド研究談話会
    • 発表場所
      首都大学東京、東京都、南大沢市
    • 年月日
      2015-09-04 – 2015-09-05
  • [学会発表] 寒冷暴露時の褐色細胞組織増生機構2015

    • 著者名/発表者名
      深野圭伍,岡松優子,小林純子,坂上浩,木村和弘
    • 学会等名
      第20回アディポサイエンス・シンポジウム
    • 発表場所
      千里ライフサイエンスセンター、大阪府、豊中市
    • 年月日
      2015-08-22 – 2015-08-22
  • [図書] 「第4章 褐藻由来フコキサンチンの抗肥満・抗糖尿病作用」、[食品因子による栄養機能制御」2015

    • 著者名/発表者名
      西川翔,細川雅史,宮下和夫(第4章執筆),芦田均,立花宏文,原博,河田照雄,佐藤隆一郎,関泰一郎,津田孝範,仲川清隆,井上裕康,薩秀夫,井上順,山下陽子,寺尾純二,上原万里子,石見佳子,福島道広,高橋信之,以下省略
    • 総ページ数
      283(57-71)
    • 出版者
      建帛社

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公開日: 2017-01-06  

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