研究課題/領域番号 |
15H04549
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木暮 一啓 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10161895)
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研究分担者 |
吉澤 晋 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (00553108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ベクターパーティクル / 遺伝子伝搬 / 大腸菌 / 全ゲノム / 比較ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまでの概念では説明できなかった新しいベクターパーティクル、すなわち異なる生物間の遺伝子伝搬を担う粒子の伝搬機構の解明を狙っている。このベクターパーティクルは、系統が離れる細菌株間、さらに真正細菌と古細菌との間で遺伝子伝搬を担うことが、これまでの我々の研究から分かっている。しかし、その具体的な機構や関連遺伝子の存在は不明であり、その解明が焦眉の課題となってきた。このために、低温で生育可能な細菌株、Polaribacter filamentus ATCC700397Tから得られたベクターパーテイクルを大腸菌(Escherichia coli AB1157)に作用させ、その増殖温度パターンの異なる形質導入株を得た。導入以前の株の全ゲノムおよび導入後の全ゲノムをそれぞれ求め、ベクターパーティクル後の遺伝子の変異からベクターパーティクルの産生を担う遺伝子の解明を狙った。その結果、両者の遺伝子は極めて類似していること、違いの部分はTransposase関連遺伝子が主であることが分かった。Transposaseはいわゆるトランスポゾンによる遺伝子転移に必要な酵素であり、ベクターパーティクルとの関係が推定される。しかし、この結果だけではベクターパーティクルの遺伝子伝搬機構の解明には至らないため、他の細菌群を用いて同様の比較株の全ゲノムを解析し、比較することから機構解明を行うことを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、Polaribacter filamentus ATCC700397Tから得られたベクターパーテイクルを大腸菌(Escherichia coli AB1157)に作用させることによって作った変異株と大腸菌AB1157のゲノム比較によってベクターパーティクルの機構が解明されると考えていたが、両者の遺伝子が極めて似ており、最終的な確認に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ベクターパーティックルを産生する株は他にもあるため、上記のPolaribacter - 大腸菌以外の組み合わせからゲノム比較を行い、最終的にベクターパーティクルの機構解明に繋げる予定である。具体的には、Dhlac trans、TkBE lac trans、STE transという三株を対象とする。
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