研究課題/領域番号 |
15H04558
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研究機関 | 農林水産省農林水産政策研究所 |
研究代表者 |
吉井 邦恒 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (00356297)
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研究分担者 |
大山 達雄 政策研究大学院大学, 政策研究科, 名誉教授 (30134323)
伊藤 房雄 東北大学, 農学研究科, 教授 (30221774)
渡辺 靖仁 山梨大学, 総合研究部, 教授 (40635827)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セーフティネット政策 / 農業保険 / 収入保険 / 経営安定 / 農業リスク / アンブレラ型 / 経営単位 |
研究実績の概要 |
1 北米の農業経営安定対策に関する分析 「経営単位」という視点に留意しつつ、アメリカ及びカナダの農業経営安定対策における農業保険制度の位置づけについて整理・分析した。アメリカでは、経営単位の収入保険WFRPは、果樹・野菜生産者等を主たる対象として実施され、作物別の農業保険と組み合わせた形で利用される事例が多い。カナダにおいては、作物別の農業保険により、収穫直後のキャッシュフローを確保し、軽微な収入・所得の減少に対しては積立制度で対応した上で,所得の大幅な減少に対して、農業所得税申告書に基づく経営単位の農業所得安定制度が最終的に機能するように仕組まれている。このように、アメリカ及びカナダでは、農業保険をベースに複数のプログラムを組み合わせることによって、農業経営安定対策が構築されている。特に、経営単位の制度は、アンブレラ型のセーフティネットとして、最終的な収入・所得を安定化させる機能を果たしていると考えられる。 2 EUのリスク管理プログラムに関する分析 EUでは、2013年のCAP改革において、リスク管理プログラムがピラー2の農村振興政策の中のプログラムとして位置づけられ、EU規則に基づく農業保険の保険料補助、互助基金への財政的支援及び所得安定化手段(IST)への財政的支援の3つのプログラムを実施する場合、EUによって助成が行われることとなった。現地調査を行ったフランス、イタリアともに、農業保険の対象外の要因による損失を互助基金で対応するように仕組まれている。また、3つのプログラムを実施しているイタリアでは、農業保険と互助基金で不足する部分をISTで補てんする。EUでも、複数のプログラムの組み合わせによって、農業者がリスク管理できるようになっており、ISTのような経営単位の安定制度は、アンブレラ型のセーフティネットとしての役割を果たしうるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EUにおいて現地調査を行い、アメリカやカナダだけでなく、EUでも、収入・所得リスクへの対応が必要となっていること、プログラムを組み合わせて、最終的には経営単位での収入・所得を安定化させる手段の重要性が認識されていること等を確認することができた。また、農業者や農業共済団体等との意見交換を通じて、経営単位の経営安定対策に対するわが国農業関係者の意識・意見を整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、経営単位の経営安定対策を品目別の経営安定対策と組み合わせた場合の政府及び農業者のメリット・デメリットを明確にするため、アメリカ及びカナダで現地調査を行うとともに、わが国におけるアンブレラ型セーフティネット政策の経済的効果について検証する。
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