研究課題/領域番号 |
15H04563
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 幹佳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20400179)
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研究分担者 |
藤巻 晴行 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (90323253)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土壌物理 / コロイド / 水環境 |
研究実績の概要 |
本研究では,土壌・水環境の保全対策技術を高度化する上で求められる,コロイド界面化学と農業工学の融合領域にある学術的課題の解明を目指している.本年度は,不飽和土中におけるコロイド輸送,自然環境に近い条件におけるモデルコロイドならびに天然材料の電気泳動の実験データの蓄積と理論解析に基づく検討の結果,以下の成果を得た. 1.静電斥力が存在する条件下において,水分不飽和土壌におけるコロイド輸送をカラム実験により調べた.具体的には豊浦標準砂とケイ酸粒子を採用したモデル系を設定し,水分飽和度,粒子の帯電特性を十分制御した上でコロイド輸送実験を行った.その結果,不飽和条件においてはケイ酸粒子のカラム内での捕捉割合が増加すること,pHの低下が捕捉の割合を増大させることが明らかとなった. 2.ラテックスモデル粒子の電気泳動移動度をpH,イオン強度,対イオンの価数と濃度比を変化させて測定し,得られた結果を理論解析した.その結果,2価の対イオンの場合,pHが変化しても,一つの結合定数の導入により,粒子表面への対イオン結合による粒子の表面電位が低下する現象を定量的に記述することができた.一方,3価の対イオンについては,より強い結合エネルギーを考慮する必要があることなどが示唆された. 3.正に帯電した天然有機ナノ粒子であるリゾチームの電気泳動移動度をpH,塩濃度を変数として測定し,結果を理論解析した.その結果,中性から酸性の領域では,対イオンが一定数吸着し,有効な電荷を減少させていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画されていた,不飽和土中のコロイド輸送,自然環境により近い条件におけるモデルコロイドおよび天然材料の界面動電現象などについて,順調に実験・解析を遂行できた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画を随時遂行する. 1.土壌・水環境中におけるゼータ電位の実態解明:土壌中の有機コロイドのモデルとしてラテックスとセルロースを,酸化物のモデルとしてケイ酸粒子を採用し,それらのゼータ電位を電気泳動法により求める.実験では,価数の異なる陽イオンの混合比,pH,イオン強度,疎水性分子や天然巨大分子の添加量を変数とする.得られた結果を,これまで妥当性を検証してきた電気二重層モデルと水力学に基づく電気泳動式に,イオン結合と形状の効果を考慮して改良した理論モデルによって解析し,その適用性を調べる.また,天然巨大分子の添加系については,近年,発達してきた界面近傍の構造を考慮したモデルの適用を試みる.理論モデルによる解析結果からゼータ電位がゼロとなる等電点の実態を解釈する. 2.粒子間相互作用の理解に必要な実験データの蓄積と理論の再検討:これまでの研究で不備が明確になった既存の相互作用理論の再検討を試みる.ここでは,これまでの理論に組み込まれていない諸要因に着目する.まず軌道解析をベースとした解析理論の改良を進めると同時に凝集実験を実施する.また,相互作用の発現におよぼす剪断流の効果をレオロジー実験により調べる. 3.土壌中のコロイド輸送:土壌におけるコロイド輸送をカラム実験により調べる.具体的には砂とモデルコロイド粒子を採用した標準系を設定し,水分,粒子の帯電特性を変数として輸送吸着実験を行い,理論解析を行う. 以上の研究においては筑波大学大学院生,研究分担者の協力を得ることで効果的な推進を図る.また,得られた研究成果をすみやかに国内外の学会において発表するとともに学術論文として取り纏める.そこでの討議と情報収集を通して,研究の到達点の評価と次年度以降の研究展開・方向性を整理する.
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