研究課題/領域番号 |
15H04578
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
藤巻 秀 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 本部 経営企画部, 上席研究員(定常) (20354962)
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研究分担者 |
河地 有木 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員(定常) (70414521)
中村 進一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00322339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物 / 放射線 / イメージング / 量子ビーム / 環境 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、イメージングデータから農作物の生産性に関する定量的指標を抽出するプロトコルの開発を目標とした研究を中心に行った。東京理科大学との共同研究として進めてきた、炭酸同化産物の生産部位から利用部位への転流効率に遺伝子変異が及ぼす影響を評価する研究について、論文として成果発表した。農業・食品産業技術総合研究機構との共同研究として進めている、イチゴ果実への同化産物の転流を評価する研究について、「イチゴシンク果実における光合成産物のアンローディング動態モデルの構築」として日本生物環境工学会で発表したところ最優秀ポスター賞を受賞するなど、成果が得られつつある。名古屋大学との共同研究として進めている、アジア地域における水稲栽培において重要な、「浮イネ」の通気組織における空気輸送能力をN-13標識窒素ガスとポジトロンイメージング技術により評価する研究について、専用のトレーサガス投与法を開発し、浮イネおよび通常イネでイメージング実験を行った結果、技術開発の目途が立った。今後、生理学的な定量解析の結果を論文発表・学会発表していく予定である。 また、作物中の重金属移行をコントロールする栽培技術・栽培条件の評価システムの構築を目標とするサブテーマでは、変化する重金属動態をイメージングデータにより把握し評価すべく、具体的な作用物質の候補であるグルタチオンに注目して、その合成能を人為的に高めたシロイヌナズナ形質転換体を用いたカドミウム吸収実験とポジトロンイメージング実験を行った。その結果、シロイヌナズナ根においてグルタチオンが効果的に作用する部位が明らかになり、複数の根タンパク質の存在量(体内生理状態)とカドミウム動態(イメージングデータ)が共にグルタチオン処理によって変化していることが示された。目下、これらの研究成果を学術論文として公表することに向けて準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体計画で掲げた5つの目標のうち「(1)計測装置の多様化と高度化」を進めることを年度当初に計画していたが、このようなハードウェア開発は前年度中に比較的大きく進展したことを受けて、これを変更し、よりソフト的な「(2)適用可能な植物種の拡大」および「(4)植物工場等における群落密度や風による生産性への影響の定量的指標の導出」の目標の達成に注力した。その結果、期待通りイチゴの施設生産における実践的な栽培条件評価に結び付く研究結果が得られたため、全体計画における進捗としておおむね順調と評価できる。また、残る「(3)経根吸収から地上部各器官への分配に至る物質選択性の定量的指標の導出」「(5)根圏機能の定量的指標の導出」の2つの目標についても、グルタチオンを鍵とした研究で順調な進捗が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目となる平成29年度には、再びハードウェア開発にも注力して、4年間の研究計画全体を通した目標達成のバランスを図る。それと同時に、より優れたイチゴ生産のための栽培条件や重金属移行制御のための栽培条件を評価するイメージングプロトコールの確立といった、本研究計画全体の核となるべきいくつかのサブテーマについては、重点的・集中的に注力することで、具体的な成果発表につなげていく。
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