研究実績の概要 |
本年度は、ウシ子宮上皮細胞を用いてIFNAR発現抑制がIFN-τのシグナル伝達に及ぼす影響を検証した。RNA干渉法によるIFNARの発現抑制がISGs,I型IFNシグナル関連遺伝子,着床関連遺伝子,細胞死関連遺伝子などのIFN-τによる誘導能に影響を及ぼすか否かを発現定量解析により検証した。RNA干渉はIFNAR1およびIFNAR2の発現を特異的に抑制し,IFN-τ添加後のISGsおよびIFNシグナル関連遺伝子の発現誘導も抑制した。この抑制効果はIFNAR2よりもIFNAR1の発現抑制で高いことから,ウシ子宮上皮細胞におけるIFN-τによるシグナル伝達はIFNAR1の発現が重要であることが示唆された。細胞死関連遺伝子もIFN-τ添加後に増加し,IFNAR発現抑制により抑制された。IFN-τのIFNARを介したJAK/STAT経路がアポトーシスおよびピロトーシス誘導に関与する可能性が示唆された。着床関連遺伝子もIFN-τ添加後に増加し,IFNAR両サブユニット発現抑制区ではIFN-τによる有意な誘導を受けなかった。これより,本実験で解析した着床関連遺伝子,TGF-β1,TGF-β2,PLAC8がIFN-τのIFNARを介したシグナルで直接,誘導されることが示唆された。以上より,着床前ウシ子宮内膜におけるIFN-τシグナルは,IFNAR1サブユニットの発現が重要であり, ISGsの発現および炎症性サイトカインの放出を伴うピロトーシスの誘導により,細菌やウイルスなどの感染症から子宮および胚を守るための免疫応答としての役割を果たすこと並びにアポトーシスの誘導により,着床期子宮組織リモデリングとしての役割を担う可能性が示唆された。 また、妊娠子宮において、カテプシンB,K,LおよびZの発現が有意に増加していたが、オートファジー関連の遺伝子発現には妊娠の有無は影響しなかった。このことから、子宮内膜の改編には、オートファジー経路の関与が少なく、リソソームカテプシン動態が大きく関与することが示唆された。
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