研究実績の概要 |
2018年度の結果から,哺乳類(マウス)の受精時にはPLCz以外の卵活性化因子関与する可能性があること,またカルシウムオシレーションとともに亜鉛スパークも重要であると考えられた.そこで本年度はそれらを明らかにする目的で,はじめにPLCz遺伝子欠損マウス作製とその解析を行った.PLCz遺伝子欠損マウス(Plcz1-/-)はすでに大阪大学の伊川らのグループで作製されており,本研究のために供与いただいた.Plcz1+/-マウスを交配させることでPlcz1-/-マウスを作製した.Plcz1-/-マウスの妊孕性を確認したところ,Plcz1-/-雌マウスは対照区Plcz1+/+マウスと同様に産子が得られた.一方Plcz1-/-マウス雄マウスにおいても妊孕性が確認され,1腹当たりの産子は減るものの完全な不妊とはならなかった.そこでPLCz以外の卵活性化因子のクエン酸合成酵素(Citrate Synthase, CS)の役割を調べる目的で,ブタ精巣および精子におけるCSの発現を調べた.その結果,ブタ精巣および精子の両方においてmRNAおよびタンパク質レベルでCSの発現が確認された.また,ブタ体外受精時に受精培地に抗CS抗体を添加すると,非添加区と比べて受精率は変化したものの発生率は著しく低下した.以上のことから,ブタ精子においてもCSは発現しており,受精以降の胚発生に重要な役割を持っている可能性が考えられた.また亜鉛スパークの意義を明らかにする目的で遺伝子改変マウスを用いて卵特異的な亜鉛トランスポーター遺伝子欠損マウスを作製し,その妊孕性を確認した.その結果,卵特異的な亜鉛トランスポーター遺伝子欠損マウスでは完全は不妊とはならなかったが,産子の数が著しく減少していた.このことから,受精時において卵の亜鉛トランスポーターが重要な役割を持っていることが示唆された.
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