研究課題/領域番号 |
15H04586
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
麻生 久 東北大学, 農学研究科, 教授 (50241625)
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研究分担者 |
北澤 春樹 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10204885)
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10708001)
渡邊 康一 東北大学, 農学研究科, 助教 (80261494)
岡田 夏美 東北大学, 農学研究科, 技術一般職員 (10621584)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルドラーゼA / M細胞 / プリオン / トランスサイトーシス / 受容体 / 複合体 |
研究実績の概要 |
経口摂取したプリオン蛋白は腸管M細胞を介して侵入する。申請者は、プリオン蛋白が腸管上皮M細胞より分泌された解糖系酵素アルドラーゼAと結合して輸送小胞へと取り込まれることが、プリオン侵入に必須であることを発見した。本研究では、輸送小胞の発芽がプリオン蛋白・アルドラーゼA複合体とM細胞膜上の受容体との結合によって誘導されることに着目し、受容体蛋白を膜輸送蛋白トランスポートゾームライブラリーより絞り込み、本研究終了時までにはその受容体を同定してM細胞を介したプリオン侵入機構の解明に加え、神経細胞への伝播機構の解明を試みるものである。 アルドラーゼA添加処理は、M細胞の無処理蛍光ビーズ取込み量には影響を与えず、プリオン蛋白結合蛍光ビーズの取込み量を抑制することが判明した。さらに、添加したFITC標識アルドラーゼAが、M細胞によって取込まれて下部培地に輸送されることに加え、M細胞由来の細胞膜上アルドラーゼAが減少することが明らかとなった。FITC標識抗アルドラーゼA抗体を添加した実験では、下部培地中にFITC標識抗アルドラーゼA抗体が検出されたことより、M細胞膜上のアルドラーゼAにFITC標識抗アルドラーゼA抗体が結合し、M細胞がその複合体を取込み、下部培地に輸送することが判明した。この際も、M細胞由来の細胞膜上アルドラーゼAが減少することが確認された。以上より、M細胞は添加した抗アルドラーゼA抗体あるいはアルドラーゼAと細胞膜上のアルドラーゼAを共に取込むことによって、M細胞膜上のアルドラーゼA発現が減少し、プリオン蛋白の取り込みが抑制されることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マウス腸管上皮細胞(MIE 細胞)をM細胞に分化誘導させ(M-MIE細胞)、アルドラーゼA結合磁気ビーズを添加し、磁気スタンドを用いて膜タンパク質を回収し、二次元電気泳動を行いLC-MS/MS解析した。、同定したタンパク質の細胞および組織での局在は、蛍光免疫染色で解析した。磁気ビーズ添加区よりもアルドラーゼA結合磁気ビーズ添加区で高発現している二次元電気泳動のスポットをLC-MS/MS解析し、タンパク質を同定した。その中で、高スコアであるFibrillarin、HSP60とATP synthase Bについて蛍光免疫染色を行った。M-MIE細胞において、HSP60は細胞質および細胞膜に、ATP synthase Bは細胞質に発現が確認され、アルドラーゼAと共染色されたが、Fibrillarinは核内に確認されたがアルドラーゼAと共染色されなかった。。マウス腸管パイエル板において、HSP60はFAE上のM細胞に発現し陰窩付近で高発現し、アルドラーゼAと共染色された。 これらの実験結果により、M細胞上のアルドラーゼA受容体の存在する可能性が高く、同定方法の確立に繋がると確信する。
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今後の研究の推進方策 |
1)受容体の同定:M細胞がプリオン蛋白あるいはアルドラーゼ結合ビーズを取り込む測定系を用いて、選定した受容体候補蛋白に対する抗体でM細胞を前処理し、M細胞の取り込みに対する影響を解析して、最終的な受容体候補蛋白を選定する。さらに、選定した受容体に対する抗体を用いて、M細胞の異常プリオン蛋白取り込みに対する影響を解析し、異常プリオン蛋白・アルドラーゼA複合体に対する受容体を同定する。 2)プリオン蛋白・アルドラーゼA複合体に対する受容体の存在様式:抗体を用いた免疫染色による発現分布解析、細胞より膜、小胞を含む細胞内小器官および細胞質を分画してウエスタン・ブロット解析による蛋白発現の解析、増殖期および分化誘導期に経時的にmRNAを抽出して遺伝子発現解析を行う。神経細胞では、異状プリオン蛋白との2重染色に加え、抗体を用いた免疫沈降によるプリオン蛋白との親和性を比較検討する。これらの実験に加え、それぞれの細胞でのアルドラーゼA蛋白と受容体との関連性を解析し、受容体蛋白の発現様式が明らかにする。 3)神経細胞におけるプリオン蛋白・アルドラーゼA複合体受容体のプリオン感染防御への応用:マウス神経細胞株(N2aC4細胞)は異常プリオン蛋白に対して感染能を有するので、同定した受容体に対する抗体でN2aC4細胞を処理し、異常プリオン蛋白の神経細胞感染に及ぼす影響を解析する。
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