本研究はネオスポラの病原性因子を同定し、それを用いたワクチン開発への応用を目的としている。平成29年度は主に下記項目について研究を実施した。 【病原性因子を利用したモデルワクチンの作製】同定した病原性因子の候補分子としてNcGRA6とNcCypに着目した。マンノース糖鎖被覆リポソーム(OML)内へ候補分子タンパク質を封入し、モデルワクチンの作製を行った。 【マウスを用いたモデルワクチンの感染防御の評価】モデルワクチンの免疫誘導能を評価するため、マウス(C57BL6およびBALB/c、7週齢、メス)へワクチンを接種し、ELISAによる抗原特異的抗体産生の測定、脾臓細胞への抗原刺激による細胞増殖およびサイトカイン産生の測定を行った。NcGRA6は組換えタンパク質単独でのマクロファージへの活性化を誘導した。免疫マウスでの特異抗体産生と脾臓細胞の活性化は、OMLへの封入が無くてもNcGRA6の単独免疫で認められた。生存率を含めた臨床症状、脳内原虫数を指標にネオスポラ感染に対するマウスの防御免疫効果を評価したところ、NcGRA6の単独免疫で最も高い効果が認められた。さらに、NcGRA6の単独免疫は妊娠期感染による垂直感染を阻害する効果も確認された。NcCypの場合、OMLに封入したNcCyp(NcCyp-OML)において、マクロファージへの活性化、免疫マウスでの特異抗体産生と脾臓細胞の活性化が認められた。NcCyp-OMLはネオスポラ感染に対する野生型マウスの防御免疫効果を誘導したが、TLR2遺伝子欠損マウスではその効果が認められなかったため、TLR2依存的な免疫応答の必要性が示された。 以上より、ネオスポラの候補ワクチンとして、NcGRA6とNcCyp-OMLを見出すことに成功した。
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