研究課題
マクロファージ由来の腫瘍である組織球性肉腫やその類縁疾患は、ヒトでもイヌでも悪性度が極めて高く、早期に死に至る深刻な疾患である。申請者はマクロファージに特異的に発現する蛋白質であるApoptosis inhibitor of macrophage (AIM) に着目し、組換えイヌAIMを組織球性肉腫細胞の培養液に添加すると、細胞種特異的にアポトーシスが促進されることを明らかにした。この成果は、一般的にはアポトーシス抑制因子と考えられているAIMが、マクロファージ自身に対しては逆にアポトーシスを引き起こすという、全く新しいAIMの機能を示唆している。さらにはイヌAIMの遺伝子配列の特定およびイヌにおけるAIM発現の生体内分布といった基盤的調査を行い、比較動物学的観点から、AIM蛋白質のアポトーシス促進機能を有する部位の特定を行うことに成功した。また、組織球性肉腫細胞を移植したヌードマウスを作製し、AIMの投与による本腫瘍の試験的治療を試み、一定の成績を得た。その他の様々な腫瘍中に存在する異型マクロファージであるTumor associated macrophage (TAM)は、腫瘍の薬剤耐性化に寄与する増悪因子である。TAMの分化制御機構は明らかになっておらず、また臨床例においてTAMを駆逐する方法も見つかっていない。申請者は、マクロファージにおけるAIMの発現低下がTAM様の形態変化を引き起こすことを明らかにした。これらの成果は、TAMの分化制御機構の解明につながることが期待される。さらにAIMの機能を臨床応用できれば、組織球性肉腫患者のみならず薬剤耐性腫瘍で苦しんでいる莫大な数のヒトや動物を治療することができると考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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