研究課題/領域番号 |
15H04592
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高島 康弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20333552)
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研究分担者 |
高須 正規 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (00503327)
大屋 賢司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50402219)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胎盤 / 垂直感染 |
研究実績の概要 |
トキソプラズマ感染白血球の挙動を明らかにするため,赤色蛍光タンパクを発現する組換え原虫をGFPマウスの白血球に感染させたのち,野生型マウスの血流中に移入した。経時的に臓器を採材し,標的臓器に流入する白血球と虫体をそれぞれ緑色および赤色蛍光を指標に観察した。いくつかの臓器において感染白血球は非感白血球よりも血管内皮に接着しやすく効率よく臓器内に留まっている傾向がみられ,肺では有意差が認められた。また肺に留まった感染白血球内の原虫の多くは4時間以内に白血球から脱出していた。肺において感染白血球の血管内皮細胞への接着と原虫の白血球からの脱出が同時に観察されたため,感染白血球の内皮細胞への接着が原虫の白血球脱出の引き金となっているのではないかと推測し,次の実験を行った。まず感染白血球を肺から取り出したばかりのマウス肺血管内皮細胞(MLEC)と共培養した群と間にメッシュを入れ白血球と内皮が直接接触しない群を作成した。これら2群について白血球から脱出する原虫数を測定して比較した。非継代MLECに接着した感染白血球からの脱出虫体数は接着を許さず培養した時の数十倍であった。以上から感染白血球の血管内皮接着がシグナルとなって原虫は白血球から脱出することが分かった。またこの脱出を補助する分子の一つを同定した。一方胎盤においてb対決流と触れる栄養幕細胞の表面ではこのような現象はおこらず、これが垂直感染防御の一翼を担っている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予測とは異なった生命現象が見出されているため、完全に予定した通りの実験を遂行しているわけではないが、感染のおこりやすい臓器とそうでない臓器の違いがほぼ把握できており大筋として当初の目的を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、トキソプラズマ原虫が感染白血球から標的臓器に乗り移るメカニズムが明らかとなったが、この現象が胎盤では非常におこりにくいことが示唆されている。そのため他臓器と胎盤の血液内皮細胞及び栄養幕細胞の表面分子の発現パターンを比較する予定である。また発現レベルが特徴的な分子についてはそのメカニズムを調べる。さらに垂直感染が成立する場合、虫体の侵入門戸がどこであるのかを解剖学的に調査する。感染動物の胎盤から連続切片を作成して河川箇所を探す従来の手法では効率が悪く、目的を達成できない可能性が高い。そこで臓器全体を透明化し、蛍光を発する組換え虫体を3Dイメージングで検索する手法を用いる予定である。すでに組換え虫体は作成済みであるが、必要であれば深部に感染する虫体からだの検出感度を上げるため、改良した組換え虫体を作成する。
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