研究課題
AQP11は、オルガネラに発現するユニークな水チャネル分子で、AQP11の機能阻害は、乳児期に腎障害を発症することが明らかとなっている。しかし、この腎障害発症メカニズムは不明のままである。本研究では、我々の研究室で培ってきた網羅的タンパク質・遺伝子解析技術とin silico分子間ネットワーク解析技術とを組み合わせたシステム生物学により、AQP11に関する遺伝子改変動物の腎などを解析し、AQP11機能阻害による腎障害発症の分子メカニズムを解明することを目的とする。本研究目的達成のために計画している研究項目は、(1)タンパク質-タンパク質間相互作用ネットワークの構築、(2)分子カスケードの抽出、(3)実証研究の3つである。最終的には、これらの結果を総合的に考察し、AQP11機能阻害による腎障害発症メカニズムを明確にし、正常な腎の発達の分子理解を進展させる。平成27年度には、(1)および(2)の2項目の実験を実施した。既に同定している322種類のAQP11結合タンパク質に基づいてタンパク質間相互作用ネットワークを構築した。また、並行してAQP11ノックアウトおよび野生型マウスそれぞれから遺伝子を抽出して網羅的解析を実施し、パスウェイ解析を行った。これらの検討結果から、AQP11ノックアウトマウスの腎において、NOX2による活性酸素経路、およびCASP9とCASP3に帰結するアポトーシス経路が障害に関与する経路として抽出された。次年度以降においては、これまでに両経路の相互作用が分かっており、この相互作用を念頭に置いて、抽出した2つの経路が妥当であったのかどうかについて、タンパク質発現量や局在の観点から検討する。また、平成27年度に得られた知見に基づいて、in vivoにおける(3)の実証研究も進めて行く。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の通り平成27年度終了時点までに、AQP11機能阻害による腎障害発症経路を見出すことができた。また、この結果に基づいて、現在、同定した経路上のタンパク質の発現量の検討を行っている。さらに、次年度以降の研究に向けて、AQP11と同様の表現型を示す動物の入手などについても準備を進めている。以上の状況を勘案して、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
問題なく順調に進捗しているので、今後も計画通りに研究を進める。また、ある程度研究が進捗した場合には、外部発表にも努めるようにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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