研究実績の概要 |
カナバン病は中枢神経の白質変性症の一つであり, 原因遺伝子aspartoacylase (Aspa)の変異により引き起こされる. カナバン病モデルとして期待されているAspaノックアウト(AspaKO)ラットを用いて, 中枢神経のシンプルな白質である視神経に着目し, 病態解明を行った. 4, 8, 12週齢のAspaKOラットのホモ型および対照ラット(野生型)の視神経を採材し,組織学的評価および透過型電子顕微鏡観察を行った. また, 視神経のパラフィン切片に対して各種グリア細胞に対する免疫組織化学染色(PDGFRα, Olig2, GFAP)を行った. またPLP, MBPなどのミエリン関連蛋白やGFAP, AQP4に対するRT-PCRを行い, ミエリン関連蛋白に対するウエスタンブロッティング(WB)を行った. 4週齢のAspaKOラットで空胞形成が, 透過型電子顕微鏡ではミエリンの水腫状変化がみられ, ミエリン形成障害が示唆された. 4週齢のAspaKOラットでは野生型対照ラットと比べ, PDGFRα(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー)陽性細胞数が有意に増加し, 8週齢では減少傾向にあった. Olig2(オリゴデンドロサイトマーカー)陽性細胞数も同様の所見が観察された. また, 4, 8週齢でGFAP(アストロサイトマーカー)の染色性の低下がみられた. RT-PCRでは, 8週齢のAspaKOラットでMBP(ミエリン塩基性蛋白質)と GFAPのmRNA発現が有意に減少し, WBでは4週齢のAspaKOラットでMBP蛋白の有意な減少, 4, 8週齢でGFAP蛋白の有意な減少がみられた. 以上より, AspaKOラットの視神経では, ヒトのカナバン病と同様に空胞病変とミエリンの水腫状変化が認められ,アストロサイト機能障害,オリゴデンドロサイトの分化異常が示唆された.
|