研究課題
(1)細菌の二次感染による重症化肺炎モデルの作成A型インフルエンザウイルス(IAV)は、野生型マウスで致死的であるが、Tmprss2 遺伝子欠損マウスでは非もしくは低病原性の2株のマウス馴化株を、2株の肺炎球菌を用い、野生型マウスで細菌の二次感染により重症化が認められたEzoeらの方法(Vaccine 29:1754-61. 2011)らに準じて実施した。具体的には、①IAV単独感染群、②肺炎球菌単独感染群、③混合感染群(IAVの一次感染2~5日後に肺炎球菌を二次感染させた群)において、混合感染群でのみ致死もしくは重篤な体重減少が認められるTmprss2 遺伝子欠損マウスの二次性重症化肺炎の感染条件の決定を試みた。実施した感染条件では、Ezoeらの報告にあるような混合感染群で致死的な重症化を、Tmprss2 遺伝子欠損マウスでは再現できなかった。IAV単独感染群と混合感染群の各感染肺における感染性全ウイルス量や活性型ウイルス量の比較でも、両群に有意な差は認められなかった。一方、Tmprss2 遺伝子欠損マウスへのH3N2インフルエンザウイルスの高力価単独感染時、Tmprss2非依存的なHA開裂が確認された。(2)細胞内でのウイルス活性化の時空間的制御機序な解明「いつ開裂したのか?」を詳細に解析するために、非開裂のHAタンパク質は検出せず、開裂したHAタンパク質のみを検出する抗体の作出を試みた。HA開裂により構造変化の伴う領域からペプチド抗体の作成を試みたが、そのペプチド抗体ではHAタンパク質をウエスタンブロッティングにより検出することはできなかった。引き続き、同様の領域の別のペプチド抗体の作製を試みる。培養細胞レベルでのIAVとの肺炎球菌の混合感染実験のために、肺炎球菌が感染可能なpIgR発現MDCK 細胞を作製した。トリプシン非存在下のIAVと肺炎球菌のpIgR発現MDCK 細胞での混合感染において、HAの開裂促進は認められなかった。
4: 遅れている
(1)細菌の二次感染による重症化肺炎モデルの作成Tmprss2 遺伝子欠損マウスを用いた細菌の二次感染による重症化肺炎モデルの作成が難航している。これまでの解析から、IAV感染野生型マウス肺における、活性型ウイルス(HAが既に開裂しており、トリプシン非存在下でも感染能を有するウイルス)の割合は、20%以上(48.5±29. 6%, n=9)であるが、IAV感染Tmprss2 遺伝子欠損マウス肺における、活性型ウイルスの割合は、10%未満(2.8±2.7%, n=9)がおおよその指標である。この活性型ウイルスの割合において、IAV単独感染群と混合感染群に有意な差は認められなかったが、混合感染の一部では、活性型ウイルスの割合が19.2%と高い値を示した個体が認められた。この高い活性型ウイルスの割合は、Tmprss2 遺伝子欠損マウス肺内でのウイルスの多段増殖を可能にすると考えているが、群全体での再現が実施できていない。肺炎球菌の調整方法を改良する必要があると考える。(2)細胞内でのウイルス活性化の時空間的制御機序な解明MDCK細胞において、IAVと肺炎球菌の混合感染では、HAの開裂が起こらない(再現できない)、もしくは、肺炎球菌のpIgR発現MDCK 細胞への感染効率が低いため、同一細胞内でIAVと肺炎球菌が同時感染する割合が低く、ウエスタンブロティングでのHA開裂が検出限界以下であることが考えられた。
(1)細菌の二次感染による重症化肺炎モデルの作成高力価の肺炎球菌の菌液調製時の溶菌等が、同一群内の実験値の大きなバラつき、ひいては実験の信頼性の低下に起因していると考えている。肺炎球菌の菌液調製方法を改良することで実験精度の向上を図りつつ、混合感染群において活性型ウイルスの割合が高いTmprss2 遺伝子欠損マウス感染モデルの開発を試みる。また、これまで用いた肺炎球菌株だけでなく、インフルエンザ菌などの他の株についても、同様に検証する。(2)細胞内でのウイルス活性化の時空間的制御機序な解明肺炎球菌の感染効率がpIgR発現MDCK 細胞より高いpIgR発現マウス胎児線維芽株化細胞、pIgR発現BHK細胞を作製したので、それらを用いて検証を行う。
すべて 2015
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J Virol.
巻: 89 ページ: 5154-8
10.1128/JVI.00124-15.