研究課題/領域番号 |
15H04601
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50343611)
|
研究分担者 |
道下 正貴 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50434147)
佐々木 崇 順天堂大学, 医学部, 助教 (50723897)
呰上 大吾 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (80453934)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 肥満細胞腫 / 犬 / イマチニブ / 耐性 / KIT |
研究実績の概要 |
KITに変異を有する犬の肥満細胞腫 (MCT) ではイマチニブが奏功するが、最終的に耐性を獲得することが問題となっている。一方、MCTのイマチニブ耐性化の解析はほとんど行われておらず、その耐性機構は不明である。そこで、本研究では犬の肥満細胞腫のイマチニブ耐性機構を解明することとした。 平成28年度は、まずイマチニブに対して耐性を獲得したMCT症例の治療前および耐性獲得後のKITの塩基配列の解析を行った。その結果、6症例中1症例でKITに二次変異 (c.2463T>A) が同定された。一方、5症例では二次変異は同定されなかった。次いで、イマチニブに感受性の犬の肥満細胞腫株化細胞CoMSおよびVI-MCからそれぞれのイマチニブ耐性株rCoMS1 (IC50 約9M) およびrVI-MC1 (IC50 約2 M) とrVI-MC10 (IC50 約12M) を作製した。これらの細胞を用いて、腫瘍細胞のイマチニブ耐性化機構について検討した。rVI-MC1およびrVI-MC10では二次変異 (c.1523A>T) が同定され、この変異を有するKITのリン酸化はイマチニブに抵抗性を示した。さらに、rVI-MC10では高濃度のイマチニブに対してKIT/SFK非依存性のERKの活性が認められた。一方、rCoMS1ではKITの過剰発現が認められた。 以上から、イマチニブに対して耐性を獲得した犬の肥満細胞腫において、KITに二次変異を持つ症例の割合は少ないことが示唆された。株化細胞を用いた解析から、KITに二次変異を持たない症例ではKITが過剰発現し、その結果イマチニブに対して耐性を獲得している場合があると考えられた。一方、KITに二次変異を持つ症例では、二次変異によりイマチニブ耐性を獲得することが示された。また、二次変異に加えてKIT/SFK非依存性のERK活性化が起こり、イマチニブに対してより強い耐性を獲得することもあると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は犬の肥満細胞腫株化細胞におけるイマチニブ耐性化のパターンを明らかにすることを目的とした。今回の研究においてイマチニブに暴露された犬の肥満細胞腫株化細胞ではKITに二次変異が生じる場合あるいはKITの過剰発現がおこる場合があることが明らかとなり、イマチニブ耐性化にはこのような異なる分子機構が存在することを明らかにした。これらのパターンが生じる詳細なメカニズムは平成28年度以降検討する予定であるが、平成27年度に得られたこれらの知見は、当初予定していたスケジュールに従って得られたものであり、このことから研究は概ね予定通りに進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は主に犬の肥満細胞腫株化細胞におけるKITの二次変異およびKITの過剰発現に注目し、それらの発生機構とイマチニブ耐性化におけるその役割、またその分子基盤に基づいた耐性克服法の構築を検討することとする。さらに、H27年度に行った臨床検体の解析では、サンプル数に限りがあるため、イマチニブ耐性腫瘍サンプル数を増やしてKITの二次変異およびKITの過剰発現の解析を行う予定である。
|