研究課題
平成27および28年度の研究から、犬の肥満細胞腫のチロシンキナーゼ(TK)阻害剤耐性化は、TK阻害剤に反応して腫瘍細胞の形質が様々に変化することで生じる可能性が示された。この腫瘍細胞の形質の変化には、①腫瘍細胞のKIT遺伝子にTK阻害剤抵抗性(KIT再活性化)二次変異が発生する、②KITの側副シグナルを介してERKが活性化する、③KITユビキチン化の低下によりKITの過剰発現と増殖シグナルの増強が発生する、④細胞株によって①~③が単独あるいは混在する、⑤上記分子機構を持たないTK阻害剤耐性細胞株が存在することなどが含まれることが明らかとなった。そこで、平成29年度は、腫瘍のheterogeneityに注目し、TK耐性の犬の肥満細胞腫細胞株を用いて次世代シーケンサーによるディープシーケンス解析を行った。その結果、予め超微量のサブポピュレーションとして存在していたTK阻害剤抵抗性の二次変異を持つ腫瘍クローンがTK阻害剤により選択されて増殖し、腫瘍として顕在化する場合があることを見出した。すなわち、犬の肥満細胞腫では、Heterogeneousな腫瘍細胞集団の中からTK阻害剤耐性素因を持つ超微量クローンのセレクションと増殖により耐性化する場合があると考えられた。以上のことから、肥満細胞腫のTK阻害剤耐性化は、単一の分子機構ではなく、腫瘍細胞の形質の変化や多様な集団の中からのセレクションなど様々な分子機構が複雑に組み合わさって生じることが示された。本研究で得られた知見は、TK阻害剤耐性化肥満細胞腫に対する個別化した耐性克服治療を構築する上できわめて有益と考えられた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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